最新記事

ネット

「SNS広告よ、悲しみに気付いて」死産した女性がツイート

Social Media Isn’t Set Up for Grief

2019年01月07日(月)11時55分
シャノン・パラス

悲しいニュースを推測する仕組みになっていない? SAM THOMAS/ISTOCKPHOTO

<死産した女性のツイートが広告表示の在り方に一石を投じた>

2018年11月末にワシントン・ポスト紙の動画編集者ジリアン・ブロッケルが「とても悲しい個人的なニュース」をツイートした。おなかの中の赤ちゃんが亡くなったというのだ。

悲しい出来事について心の整理をするのは大きな試練。それは本質的にSNSと相いれない行為でもある。SNSは私たちの生活を楽にするためではなく、私たちの生活を利用して利益を上げるためのものだからだ。

ブロッケルの例はそのことを改めて人々に気付かせた。死産について投稿した後もアカウントに赤ちゃん関連の広告が表示され続けたため、彼女はテクノロジー企業(文面からフェイスブックやツイッターなどと分かる)宛ての公開書簡をツイッターとワシントン・ポストに掲載。「あなた方のアルゴリズムは私の妊娠や出産が分かるくらい賢いのだから、赤ちゃんが死んだと分かるくらい賢くもなれるはずだ」と批判した。

SNSは、幸せな出来事に関連する広告をほぼ自動的に表示する。ブロッケルが「#赤ちゃんがおなかを蹴った」とインスタグラムに投稿すると、妊婦服の広告が表示されたように。

しかし流産後にこうした広告を止めたければ、手動で設定しなくてはならない。フェイスブックのロブ・ゴールドマン広告担当副社長はブロッケルのツイートに、特定の広告を止める手順を返信。彼女は「数日前に試みたが、悲しみのさなかにあっては非常に分かりにくかった」と返信した。「だから広告が停止されるよう、『死産』といったキーワードを入れてみた」

しかも赤ちゃん関連の広告をブロックしたら、今度は養子関連の広告が表示されたという。

胸の痛む経験をしたのは彼女だけではない。ある人は「流産や子供を亡くした後には、嫌な広告のブロックを友人か家族に頼む」よう忠告。「かつて(妊娠などの)お祝い事を投稿した記念日には毎年フェイスブックを使わないようにするか、投稿を削除するのを忘れずに。毎年繰り返し表示される仕組みになっているから」と言う人もいた。

真の問題は、フェイスブックにとっては個人の悲しみに配慮して広告を選別することに商売上の意義がないこと。企業が思いやりを持つよう、SNS上で声高に圧力をかけるしかない。

©2019 The Slate Group

<2019年1月1/8日号掲載>

※2019年1月1/8日号は「ISSUES2019」特集。分断の時代に迫る経済危機の足音/2020年にトランプは再選されるのか/危うさを増す習近平と中国経済の綱渡り/金正恩は「第2の鄧小平」を目指す/新元号、消費税......日本は生まれ変わるか/フィンテックとAIの金融革命、ほか。米中対立で不安定化する世界、各国はこう動く。

ニューズウィーク日本版 Newsweek Exclusive 昭和100年
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月12日/19日号(8月5日発売)は「Newsweek Exclusive 昭和100年」特集。現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロシア軍、ウクライナ東部で突如攻勢 米ロ会談前に占

ビジネス

英政府、経営難の水道会社巡り助言契約と関係筋 特別

ワールド

ガザ市攻撃で11人死亡、南部にも空爆 増える餓死者

ビジネス

アングル:最高値の日本株、株高持続の見方 米株や国
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 5

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 4

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:Newsweek Exclusive 昭和100年

特集:Newsweek Exclusive 昭和100年

2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた