最新記事
アメリカ

「戦場の霧」と化すトランプ、矛盾するシグナルの発信源に

2026年3月30日(月)17時00分

拡大する戦争の封じ込めに苦慮

トランプ氏は中東にさらに数千人の米軍部隊を派遣しており、イランが自身の要求に応じない場合には地上部隊の投入を含めて攻撃を強化すると警告している。

アナリストらは、こうした脅しは米国をより長期にわたる紛争に巻き込むリスクがあり、イランへの地上部隊派遣は多くの米国民の反発を招く可能性があると指摘する。

専門家たちによると、米軍が「オペレーション・エピック・フューリー」と呼ぶ対イラン軍事作戦で大規模な空爆を実施し、イランの軍事力と核施設を弱体化させた後、トランプ氏が戦闘の目的は達成されたと勝利宣言を出して撤退するシナリオも想定されている。

だが、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が完全に解消されない限り、そのような主張は空虚に響くだけだ。トランプ氏は、ホルムズ海峡の安全確保を支援するために軍艦を派遣することを欧州の同盟国が拒否したことに不満を表明している。

ホワイトハウスの当局者によると、トランプ氏は勝利を強調する発言を続ける一方で、神経質になっている金融市場を安心させるためにメッセージの⁠トーンを徐々に変えている。側近らに対しては「戦争はまもなく終わる」と強調するよう促しているという。

しかしながら、明確な撤退戦略がないことはトランプ氏の大統領としての‌威信にとどまらず、議会で過半数を僅差で保っている共和党が11月の中間選挙で敗北するリスクももたらしている。

トランプ氏の最大の誤算は、イランによる報復が想定を上回っていたことだ。イランは抱えているミサイルやドローン⁠でイスラエルや近⁠隣の湾岸諸国を攻撃し、世界の石油の約5分の1が通過するホルムズ海峡を事実上封鎖することで世界経済に衝撃を与えた。

米首都ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・アルターマン氏は「イラン政府の賭けは敵対勢力より長く、より大きな痛みに耐えられるだろうというものであり、その見込みは正しいかもしれない」と指摘した。

ホワイトハウスの当局者は、トランプ氏が率いるチームはホルムズ海峡でのイランの対応に「万全の準備」を整えており、海峡が近いうちに再開されると確信していると発言した。

ところが、トランプ氏の不安が高まっていることを最も如実に示す兆候は今月23日に現れた。イランがホルムズ海峡を経由した船舶の航行再開を認めない場合には同国のエネルギー施設を攻撃するとけん制していたのを、攻撃を5日間延期すると宣言したのだ。26日には攻撃を4月6日ま‌で10日間停止すると表明した。

同時に、国内での圧力も高まっている。

世論調査によると、イラン攻撃は米国民の間で圧倒的に不人気だ。ロイターとイプソスが23日発表した調査でトランプ氏の支持率は36%まで低下し、2期​目の最低を更新し‌た。

元トランプ政権高官はロイターに対し、ホワイトハウスは戦闘による政⁠治への影響に対する懸念を強めており、共和党所属の議員たちが中間選挙への不安を表明していること​が背景にあると語った。

共和党のロジャース下院軍事委員長は26日、イランへの軍事作戦の規模について十分な情報を提供していないとしてトランプ政権を批判した。

これに対し、ホワイトハウス当局者はトランプ氏の側近たちが戦闘の前後に何度も議会に説明してきたと反論した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英住宅ローン承認件数、2月は3カ月ぶり高水準 今後

ビジネス

イスラエルの26年経済成長率、戦争長期化なら3.3

ワールド

韓国、原油高で一般車も運転規制検討 燃料税追加引き

ワールド

イスラエル、イランがミサイル発射と表明 イエメンか
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中