最新記事
韓国

韓国憲法裁、ユン大統領を罷免 突然の戒厳令から142日で

2025年4月4日(金)11時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ユン大統領を印刷した国旗を手にデモ行進する支持者たち

ソウル市内をデモ行進するユン大統領の支持者ら REUTERS/Kim Hong-Ji

韓国の憲法裁判所は4月4日午前11時、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の弾劾審判の宣告を行い、罷免を言い渡した。裁判官8人全員一致での決定だったという。

韓国の憲政史上、弾劾審判は2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領、2017年のパク・クネ(朴槿惠)に続き3度目、現職大統領が罷免されるのはパク元大統領に続き2度目である。KBS、YTNなど韓国メディアが一斉に報じた。

ユン大統領の弾劾審判宣告は2月25日の弁論終結から35日、昨年12月14日の弾劾訴追案国会通過から111日経過しており、歴代大統領の弾劾審判の中で最も長期間を要した。以前のノ・ムヒョン(盧武鉉)、パク・クネ両元大統領はそれぞれ弾劾訴追から63日・91日で宣告が下されていた。今回、事案の重大性と国民的関心を反映し、判決内容は全国民に生中継され、一般人の傍聴も許可された。

これにより中央選挙管理委員会は弾劾後60日以内に大統領選挙を実施する必要があり、6月3日頃に早期大統領選挙が行われる見通しとなった。パク・クネ元大統領の罷免後に行われた第19代大統領選挙も2017年3月10日の憲法裁罷免決定から60日後の5月9日に実施された経緯がある。


 

弾劾審判、主な争点は?

この弾劾審判の主な争点は三つあった。まず非常戒厳宣言の手続き問題について。国会側は憲法要件に該当せず国務会議も手続き不備があったと主張したのに対し、大統領側は野党の「コネ作り」と「予算削減措置」が国家非常事態に当たり要件を満たしていたと反論した。

次に国会封鎖疑惑では、国会側はユン大統領が軍警に「議員を引き出す」などの指示を出したと主張したが、大統領側は「秩序維持」が目的だったと反論した。

さらに政治家逮捕指示疑惑については、国会側が政治家や法曹人の「逮捕対象者名簿」の存在を指摘したのに対し、大統領側は「スパイを捕まえろ」と言っただけで政治家逮捕の指示はなかったと主張した。

ユン大統領は最後の弁論で68分間話し、「国民に混乱と不便をおかけして申し訳ない」としながらも、非常戒厳は「巨大野党の暴走を知らせるための対国民訴え用」だったと強調。弾劾が棄却されれば「残りの任期にこだわらず政治改革を推進する」と述べたが、憲法裁判所の決定受け入れや国民統合についての言及はなかった。

憲法裁判所周辺は厳戒態勢

4日の弾劾審判宣布にあたって憲法裁判所周辺は混乱防止のため半径150メートル内での集会が禁止され、正門前で座り込みを行っていた大統領支持者たちは移動を命じられた。道路は機動隊車両で封鎖され、最寄りの安国駅は3日夕方4時から全ての入口を封鎖、地下鉄3号線は4日の営業が終了するまで、安国駅を通過することになった。さらに、周辺の駅についても駅長判断で通過させることがあるという。周辺の企業も4日は出勤自体が困難になるということで、リモート勤務か有給休暇を取得するように社員に通知しているという。

一方でこの日の判決傍聴には約9万6000人余りの市民が申請し、20席に対する競争率は4818.5倍に達した。これは歴代弾劾審判宣告の中で最高の競争率となった。なお、ユン大統領は「混雑が憂慮される状況で秩序維持と大統領警護問題を総合的に考慮した」として判決期日に出席しなかった。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ

ワールド

フィリピン、大型台風26号接近で10万人避難 30
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 8
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 9
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中