さらなる暗黒地域が...ミャンマー詐欺拠点「大救出劇」で浮き彫りになったサイバー詐欺産業の脅威

SOUTHEAST ASIA’S SCAM INDUSTRY “CRACKDOWN”

2025年3月12日(水)17時00分
ジェイコブ・シムズ(ディプロマット誌コラムニスト)

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詐欺に加担した容疑でミャンマーから南京に送還された200人の中国人(2月20日) XINHUA/AFLO

実際、中国当局は正規の送還手続きとは別に、既に1000人以上の自国民を超法規的な手段で本国に送還している。しかし少なくとも現時点では、そうした人々が人身売買の被害者かどうかの審査は行われていないし、彼らに関する情報が広く各国の捜査機関と共有された形跡もほとんどない。

要するに、被害者の解放と送還に向けた動きはあるが、彼らに対する支援には大いなる空白がある。当座の受け入れ国となるのはタイだが、同国政府には大量の人身売買被害者の受け入れという前代未聞の事態に対処する資金的な余裕がない。欧米の同盟国・友好国からの支援は、もっぱら一握りのNGOに集中しているが、そうした団体の多くはトランプ米政権の対外援助凍結の影響で資金繰りが苦しくなっている。


タイ政府としては、この空白を何としても埋めなければならない。必要な資金を出すのは、たぶん中国だ。しかし中国政府が何の条件もなしで被害者救出の資金と技術的支援を提供するとは思えない。

タイは地政学的に複雑な位置にあり、人権に関しても何かと問題を抱えているが、一応は国際社会の法的秩序に従っている。軍事的に中立な国だし、東南アジアにおける地政学的な問題に関する国連やASEANでの投票履歴は妥当であり、中国政府による不当な権利侵害にも、少なくとも今までは毅然として対処してきた。

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