最新記事
ウクライナ戦争

NATO諸国、ウクライナ支援の方針転換でプーチンの警告を無視

2024年6月3日(月)17時40分
アレクサンドラ・シャープ、イザベル・バンブルーゲン
アメリカは地対地ミサイルATACMSもウクライナに供与 U.S. ARMYーABACAPRESSーREUTERS

アメリカは地対地ミサイルATACMSもウクライナに供与 U.S. ARMYーABACAPRESSーREUTERS

<プラハでの外相会合で、NATOがウクライナのロシア領内攻撃を容認>

NATO諸国がウクライナ支援でさらに一歩踏み込んだ、と言えそうだ。

5月31日、NATOはチェコの首都プラハで外相会合を開催。この場で主要国が続々と政策を転換させ、ウクライナが西側諸国から供与された兵器を使ってロシア領内の軍事目標を攻撃することを容認する方針を打ち出したのだ。ロシアのプーチン大統領がこの数日前、そうした方針転換は核戦争のリスクを高めると警告したばかりだった。

これまで欧米諸国の多くは、ウクライナのゼレンスキー大統領の要望を退け、ウクライナに兵器を供与する条件として、その兵器でロシア領内を攻撃しないよう制限を課してきた。とりわけバイデン米大統領は、ロシアとNATOの直接的な紛争──「第3次世界大戦」と呼んできた──を避けるために、兵器の用途に制約を課すべきだと主張していた。

しかし、バイデン政権は31日、ウクライナ政府に対して、同国北東部のハルキウ(ハリコフ)に近いロシア領内の軍事目標を攻撃するために米国製兵器を使用することを認めたと明らかにした。ロシア軍は最近、その一帯から国境を越えてハルキウ周辺に攻撃を行い、何十人ものウクライナ市民の命を奪っている。

この方針転換により、バイデンは米大統領として初めて、核兵器で武装した敵対国の領内に対する軍事行動を、限定的とはいえ認めたことになる。しかし米政府当局者たちは、長距離兵器でロシア領内を攻撃することは依然として認めていないと繰り返し強調している。

アメリカに続いてドイツも31日、ハルキウ周辺へのロシア軍の越境攻撃に対する自衛のために、ウクライナがドイツの供与した兵器を用いることを容認する方針を表明した。オランダ、フィンランド、ポーランドも、こうした方針を支持する姿勢を示している。

しかも、フランスのマクロン大統領は2月以来、欧米諸国の部隊のウクライナ派遣に関して「あらゆる選択肢を排除すべきでない」と主張し続けている。フランス政府は、ウクライナ兵を訓練するために訓練要員の兵士を派遣する計画についてウクライナ側との協議を進めている。

ロシア政府は、NATO諸国の方針転換を厳しく批判した。「アメリカの兵器によりロシア連邦を攻撃しようという企ては、アメリカがウクライナでの紛争に関与していることを実証している」と、ロシアのペスコフ大統領報道官は5月31日に述べている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国習主席、異例の民間企業シンポジウム主催へ 信頼

ビジネス

キリンHDの24年12月期は純利益半減、構造改革の

ワールド

米印首脳会談、貿易と関税巡る対立解消へ協議開始で合

ビジネス

楽天G、24年12月期は5年ぶり営業黒字に転換、モ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ガザ所有
特集:ガザ所有
2025年2月18日号(2/12発売)

和平実現のためトランプがぶち上げた驚愕の「リゾート化」計画が現実に?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景から削減議論まで、7つの疑問に回答
  • 3
    吉原は11年に1度、全焼していた...放火した遊女に科された「定番の刑罰」とは?
  • 4
    【クイズ】今日は満月...2月の満月が「スノームーン…
  • 5
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 6
    夢を見るのが遅いと危険?...加齢と「レム睡眠」の関…
  • 7
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 8
    終結へ動き始めたウクライナ戦争、トランプの「仲介…
  • 9
    鳥類進化の長年の論争に決着? 現生鳥類の最古の頭骨…
  • 10
    「ばかげている」北朝鮮がトランプ大統領のガザ所有…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ドラマは是枝監督『阿修羅のごとく』で間違いない
  • 4
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 5
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 6
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 7
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観…
  • 8
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップル…
  • 9
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景…
  • 10
    「だから嫌われる...」メーガンの新番組、公開前から…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中