最新記事

小惑星

小惑星帯にある42個の天体が画像でとらえられる

2021年10月19日(火)18時42分
松岡由希子

42個の小惑星  ESO/M. Kornmesser/Vernazza et al./MISTRAL algorithm/ONERA/CNRS

<小惑星帯に位置する42個の小惑星を画像で鮮明にとらえることに成功した>

太陽系内の火星の公転軌道と木星の公転軌道との間には多くの小惑星が集中する「小惑星帯」がある。小惑星帯にある天体のうち、これまでに画像で細部までとらえられているのは、準惑星ケレス、小惑星ベスタ、小惑星ルテティアのみであった。

仏マルセイユ天文物理研究所(LAM)らの研究チームは、南米チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)に設置された観測機器「SPHERE」を用いて2017年から2019年まで観測を行い、小惑星帯に位置する42個の小惑星を画像で鮮明にとらえることに成功した。

その研究成果は、2021年10月12日に学術雑誌「アストロノミー・アンド・アストロフィジックス」で発表されている。

最も大きいのは直径940キロのケレス、次は直径520キロのベスタ

画像でとらえられた小惑星42個のうちの大半は、直径100キロ以上の比較的大きな小惑星だ。小惑星帯にある直径200キロ以上の小惑星23個のうち20個が画像でとらえられている。最も大きな天体は直径940キロのケレスで、直径520キロのベスタがこれに次ぐ。また、最も小さい小惑星はいずれも直径約90キロのウラニアとアウソニアであった。

これらの小惑星の形状は球体と楕円形に大別される。ケレスや直径407キロのヒギニア、直径147キロのフローラ、直径127キロのアデオナは球体である一方、ベスタやシルビア、イヌの骨のような形状で知られるクレオパトラは細長い形状をなしている。

matuoka1018poster.jpg

小惑星の軌道 ESO/M. Kornmesser/Vernazza et al./MISTRAL algorithm/ONERA/CNRS


密度はさまざま、天体の組成の並外れた多様性

研究チームは、小惑星の大きさや質量のデータをもとに、その密度を算出した。最も密度が大きいのは4.3グラム毎立方センチメートルのカリオペで、3.9グラム毎立方センチメートルのプシケがこれに次ぐ。いずれもダイヤモンドの密度よりも大きい。一方、最も密度が小さいのは約1.3グラム毎立方センチメートルのランベルタとシルビアで、石炭の密度とほぼ同等であった。

このような密度の違いは小惑星の組成が著しく異なることを示唆している。研究論文の共同著者でプラハ・カレル大学のヨーゼフ・ハヌシュ博士は「我々の観測結果は、これらの天体が形成された後に移動してきたことを裏付けるものだ」とし、「このような天体の組成の並外れた多様性は、それぞれが太陽系の異なる領域にわたって生まれたということでしか説明がつかない」と述べている。

Meet 42 Asteroids in Our Solar System (ESOcast 243 Light)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止 働き手不

ワールド

米連邦最高裁、中立でないとの回答58%=ロイター/

ワールド

イスラエル・イラン攻撃応酬で原油高騰、身構える投資

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中