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サウジ石油施設攻撃は歴史的転換点、イランは「非対称戦争」で原油相場を人質に

2019年9月19日(木)11時15分
池滝和秀(中東ジャーナリスト)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載

9月18日、サウジアラビア政府は記者会見を開き、サウジアラムコの石油施設攻撃に使われたミサイルの残骸だとする証拠品を公開した Hamad I Mohammed-REUTERS

<イランは軍事戦略の見本のような戦術を展開しており、米国がイランの関与を断定することを困難にしている。果たしてトランプ大統領に打つ手はあるのか>

サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコの東部アブカイクとクライスにある石油生産施設が9月14日未明に攻撃を受け、サウジの石油生産の半分が停止する事態に陥った。イランが支援するイエメンのイスラム教シーア派系フーシ派が無人機10機による攻撃だとして犯行を認めたが、実際に攻撃を受けたのは19カ所に上るほか、フーシ派による従来の無人機攻撃と比較して航続距離や規模、精度が格段に向上しており、米政府は「イランが関与した」との立場を示している。

だが、巡航ミサイルが使われたのかどうかや、無人機の出撃地点については情報が交錯している。米メディアは、米諜報(ちょうほう)機関が得た情報では攻撃起点はイランのようだと伝えている。イラン核合意から離脱したトランプ米政権が「最大限の圧力」をイランに加える中、逆にイランは自分たちが得意とする、通常戦力が大幅に異なる主体間の「非対称戦争」に持ち込み、米国やその同盟国、原油相場を人質に取ることで、「最大限の圧力」をかけている格好だ。

イランは、代理人(フーシ派)の使用や、否認性といった軍事戦略の教科書が教える見本のような戦術を展開しており、米国がイランの関与を断定することを困難にしている。トランプ大統領は16日、「戦争は望んでいない」としてイランとの直接的な軍事衝突を避ける姿勢を示しており、非対称戦争への対応の難しさが浮き彫りになっている。

探知困難な無人機

イエメン紛争に介入するサウジ主導の連合軍は9月16日、石油施設攻撃に使用された無人機がイラン製だったと発表した。過去のフーシ派によるサウジへの攻撃では、イランから技術供与を受けたとみられる無人機が使われているが、今回は航続距離や攻撃精度から見てフーシ派単独での犯行を疑問視する見方が一般的だ。

ただ、米戦略国際問題研究所(CSIS)のアンソニー・コーズマン上級研究員は、フーシ派は航続距離が最大で1500キロ、全地球測位システム(GPS)を使った精度の高い飛行が可能な無人機を獲得していることが知られていると指摘し、クライスで約800キロ、アブカイクで1000キロ超の飛行は可能であり、フーシ派による犯行の可能性は完全には排除されないとの見方を示している。

イエメン内戦では、軍事介入したサウジ主導の連合軍の中軸を形成してきたアラブ首長国連邦(UAE)が、7月にイエメン駐留部隊の縮小を表明した。フーシ派としては、サウジへの攻撃を強めることで、泥沼化が指摘されるイエメン内戦からサウジを撤退させたいという思惑があり、今回のような石油施設への大規模攻撃を行う意思やメリットはあるだろう。

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