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トランプ政権の中東和平、第1弾が開始 戦争の「傷跡」が示す遠い道のり

2019年6月26日(水)16時55分

アラファト氏のヘリコプター

英国統治時代から残されているものは他にもある。

ヨルダン川西岸のエリコに近いアル・ジフトリクには、英国統治時代の刑務所と軍の建物が今も残っている。長年廃墟になっており、今では羊が迷い込んだりしている。パレスチナの住民は、イスラエル軍が時折訓練に利用していると話す。

地中海に面したパレスチナ自治区のガザにも、近い過去や遠い過去の遺物がやはりたくさん残されている。

ガザの戦争墓地には、英国のために第1次世界大戦で戦った3217人、第2次世界大戦を戦った戦死者200人以上が埋葬されている。

戦後も、ガザは頻繁な発火点であり続け、それは1993年のオスロ合意でイスラエルとパレスチナの間に和平の希望が生じるまで続いた。

巨額の費用を投じてパレスチナ自治政府が設立され、故ヤセル・アラファト氏が議長の座に就いた。アラファト氏は、ガザの空港から頻繁に外国への公式訪問に出かけて行った。

だがオスロ合意で生まれた楽観は後退し、すぐに非難合戦と新たな暴力の応酬が生じた。

この空港は、早々と犠牲になった。2001年9月11日に発生した米多発攻撃の数カ月後、ガザや西岸におけるパレスチナ人の蜂起を受けたイスラエルが、滑走路を安全保障上の脅威とみなして破壊したのだ。

アラファト前議長が使ったヘリコプターはいま、プロペラが外された状態でガザの街に飾られている。そして、ガザ南部のエジプト国境の近くにあった空港の建物は、内部が破壊されて骨組みだけになった姿をさらしている。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Stephen Farrell

[エルサレム ロイター]


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