最新記事

貿易

トランプ政権、農家に最大1.3兆円支援 貿易戦争の影響緩和で

2018年7月25日(水)10時29分

7月24日、米トランプ政権は24日、全米の農家に対し最大120億ドルの支援を行うと発表した。米ルイジアナ州で9日撮影(2018年 ロイター/Aleksandra Michalska)

米トランプ政権は24日、全米の農家に対し最大120億ドルを支払う支援策を発表した。中国や欧州連合(EU)などとの貿易摩擦で生じる悪影響から農家を保護するのが狙い。

トランプ大統領はこの日、カンザスシティーで演説。貿易摩擦の相手国からの製品に関税をかける通商政策を遂行する方針を確認した上で、最終的には農家が最も恩恵を受けるとし、「もう少し辛抱してほしい」と語った。

中西部の農業州は2016年の大統領選でトランプ氏を支持した。しかし、トランプ政権が導入した中国製品への追加関税に対する中国の報復措置や、EU、カナダ、メキシコによる米鉄鋼・アルミニウム関税への対抗措置は、米国産の大豆などの農産品や乳製品、肉などを標的にしており、 米国の農家は打撃を受けている。

今年11月の中間選挙の上院選に向けた一部農業州の予備選では、トランプ政権の通商政策が主な争点となっている。

政府当局者は、今回発表した支援策について、米国と中国が通商交渉を行う間の農家の一時的な支援を目指すものだと指摘。

パーデュー農務長官は、支援資金は農務省の農産物信用公社から調達するため議会承認は必要ないとした上で、「トランプ大統領が長期的な通商政策に時間をかけて取り組むための短期的な解決策だ」と説明した。

農産物信用公社は、農産物の価格が低い場合、生産者への融資や直接支援を行う権限を持つ。

イリノイ大学の農業経済学者、スコット・アーウィン氏は、報復関税への対応策として、これほどまで大規模な農家への直接補償は前例がないと指摘する。

農業支援の発表を受け、農業機械メーカーの株価が上昇。ディアは3.1%高、キャタピラーが1.2%高、AGCOは0.6%高で引けた。

米大豆先物は1.2%上昇した。

ミズーリ州農業会のトップ、ブレーク・ハースト氏は、米政権の通商政策が変わらない限り、米農業部門は引き続き打撃を受けることになると強調。「支援金は返済期限が過ぎている融資を抱える農家には役に立つが、関税や貿易戦争が当面続くという前提ならば、支援策としては全く不十分だ」と述べた。

今回発表された農家への支援策を巡っては、共和党内で意見が分かれている。農家支援に賛同する意見がある一方、共和党が伝統的に反対してきた「大きな政府」の政策だとして批判する声も上がる。

ケンタッキー州選出のランド・ポール上院議員は「関税は米国の消費者と生産者を痛めつける税金だ」とツイート。関税を撤廃することで問題が解決すると主張した。

一方、中間選挙でノースダコタ州の民主党上院議員の議席奪取を狙う共和党のケビン・クレーマー下院議員はツイッターで農業支援を称賛した。

トランプ大統領は今週、農業が盛んなアイオワ州とイリノイ州を訪れ、共和党候補への支持を訴える見通し。

[ワシントン/カンザスシティー(ミズーリ州) 24日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、月内の対インド通商交渉をキャンセル=関係筋

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部への住民移動を準備中 避難設

ビジネス

ジャクソンホールでのFRB議長講演が焦点=今週の米

ワールド

北部戦線の一部でロシア軍押し戻す=ウクライナ軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 7
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中