最新記事

北米

貧困、肉体的・精神的虐待「児童婚の悪夢」...2000~18年の未成年の結婚は全米で約30万人

TO END CHILD MARRIAGE

2024年07月11日(木)11時38分
アンドリュー・スタントン(米社会担当)

未成年者に結婚を強要することは児童虐待に当たるという定めがあれば、CPSも介入しやすくなるはずだ。

テキサス州の州法にはこうした定めがあるため、親族でなくても、裁判所に保護命令を申し立てて、児童婚を阻止することができる。こうした州法の改正が全米で起きるように、連邦政府が奨励策を取るべきだとスウェッグマンは言う。

児童婚を支持するロビー団体は存在しないし、州法の改正が一般市民から批判されたケースもほとんどない。それなのに州法の改正が広がらないのは、2つの大きなハードルのせいだと、リースは指摘する。


第1に、州議会議員は、投票権のない未成年者に恩恵をもたらす事案を優先的に扱う習慣がない。自分たちが重要だと考える問題に対処した後で、ようやく取りかかるのだ。

この問題の認知度が低いことも足かせになっている。ほとんどのアメリカ人は、多くの州で児童婚が合法であることすら知らない。未成年者の結婚というと、16歳の男女が恋に落ちて結婚する「ロマンチックなもの」と考える議員も少なくない。

「児童婚にロマンチックな部分などひとかけらもない」とリースは言う。「これは人権侵害であり、未成年者が容易に抜け出すことのできない法的な罠だ」。リースの率いるUALは、30年までに全米50州で児童婚が禁止されることを目指している。

児童婚の禁止が進まないもう1つの理由は、児童婚が望まない妊娠の解決策とされてきたこと、そして一部の宗教団体が児童婚の禁止を望まないことだと、ビアラトは言う。

リベラルな活動で知られる米自由人権協会(ACLU)や米家族計画連盟も、児童婚を禁止する州法案に反対している。ACLUはNBCニュースで、結婚年齢を18歳以上に引き上げるカリフォルニア州法案は、「十分な理由もなく、結婚という基本的権利を不必要かつ不当に侵害するもの」だとの見解を示した。

米家族計画連盟カリフォルニア支部の広報担当者は昨年、「われわれはあらゆる虐待から若者を守ることを支持する」が、その保護は「未成年者の生殖に関する権利と、自らの健康と人生に最善の選択をする能力を妨げるべきではない」と、ロサンゼルス・タイムズ紙に語っている。

配偶者ビザという盲点

ワイオミング州の議会共和党は昨年、児童婚禁止法案は、「結婚の基本的な目的を否定するもの」だとして反対を表明した。「16歳以下でも妊娠・出産できる以上、生まれてくる子供のために結婚の道が開かれていなければならない」というのだ。

児童婚の根絶を目指す運動が「猛烈な勢いで広がる」一方で、一部の州が児童婚の拠点になる恐れがあると、ブラッドベリーは語る。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    メーガン妃はイギリスで、キャサリン妃との関係修復…

  • 4

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 3

    加工した自撮り写真のように整形したい......インス…

  • 4

    やはり「泣かせた」のはキャサリン妃でなく、メーガ…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ関税15%の衝撃

特集:トランプ関税15%の衝撃

2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か