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貧困、肉体的・精神的虐待「児童婚の悪夢」...2000~18年の未成年の結婚は全米で約30万人

TO END CHILD MARRIAGE

2024年07月11日(木)11時38分
アンドリュー・スタントン(米社会担当)

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メーン州ポートランドに住む17歳のニアマ(左)は、家族の宗教的伝統に従い結婚することに AMY TOENSING/GETTY IMAGES

未成年者に婚姻を強いる理由はさまざまだ。妻となる女性を性的に支配しようとしたり、性的指向を「矯正」しようとしたり、本来なら法定強姦罪が適用される未成年者との性行為を合法化するため等々。

児童婚は宗教的背景や社会階層にかかわらず、あらゆるコミュニティーで見られると、スウェッグマンは言う。

過酷な家庭環境や支配的な親から逃れるために結婚を選ぶ未成年者もいる。多くの場合、それは「熱いフライパンから燃え盛る炎の中に飛び込む」選択になると、スウェッグマンは警告する。

こうした結婚は「ほぼ例外なしに」性的虐待につながる、というのだ。

「相手の弱さに気付いて、それに付け込む悪辣な大人は、結婚を隠れみのに1日24時間未成年者を性的に食い物にする」


逃げれば警察に連れ戻される

当然ながら未成年者の結婚は多くのリスクを伴う。18歳未満の既婚者は身体的・精神的にも、経済や法律面でも弱い立場に置かれると、ノースイースタン大学の家庭内暴力(DV)研究所のハイアット・ビアラト暫定所長は本誌に話した。

ビアラトによれば、18歳未満で結婚した人は、成人後に結婚した人に比べDVに遭う確率と貧困率が高い一方、高校を卒業できる確率は低く、成人後に安定した仕事に就きにくいことが調査で分かっているという。

「メンタルヘルスの問題を抱えるリスクもある。鬱や不安を抱える人が多く、自殺率も高い」

加えて薬物依存症や、癌、心臓病、糖尿病などのリスクもあるという。

未成年の既婚者は「法律の壁」にも直面することになる。18歳未満では既婚者であっても法的には大人とは見なされないため、行政などの支援を求めようにも、保護者の許可がなければ相手にされないことが多い。

配偶者の許可が得られず、教育や医療すら満足に受けられないケースもあると、スウェッグマンは言う。

虐待的な関係からの脱出を支援する制度があっても、未成年者の相談を受け付けていない機関が多い現状では、未成年の既婚者は「どこにも助けを求められない」とも、スウェッグマンは言う。

離婚しようとしても、未成年者は契約を結べないためアパートを借りるのも難しい。

さらに、各州の政府機関である児童保護サービス(CPS)にさえ門前払いを食らわされることもある。児童保護の法令で未成年者に婚姻を強いることを禁じているのはテキサス州のみ。他の州では既婚者というだけで未成年者であってもCPSの管轄外とされるのだ。

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