最新記事

映画

ダイアナの苦悩はこの人にしか演じられないと思わせる映画『スペンサー』主役の好演

Kristen Stewart Plays Diana

2022年10月14日(金)17時53分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
『スペンサー』

スチュワートも若い頃から脚光を浴びることに戸惑いを感じてきた NEONーSLATE

<ダイアナ元妃の苦悩をリアルに描く話題作『スペンサー』。映画界で同じ悩みを抱えてきた主演クリステン・スチュワートの迫真の演技が光る>

パブロ・ラライン監督の伝記映画『スペンサー ダイアナの決意』は、名声に戸惑い、自らの美貌に縛られ、セレブの檻の中でプライバシーや自由を感じられずに悩む、情緒不安定な若い女性の内面に観客を引き込む。そう、これはダイアナ元妃の悲劇の寓話だ。夫チャールズとの結婚と王室との関係が破綻していた彼女が、1991年に闘いを決意する瞬間を捉えている。

だが同時に、主演のクリステン・スチュワートの女優人生の寓話でもある。彼女も若くしてメディアのあら探しの標的になり、早咲きのスターゆえのジレンマに悩まされた。

昨年10月のインタビューでスチュワートは50余りの出演作のうち「何から何まで素晴らしい作品」と言えるのは5作だけだと語った。唯一具体的に挙げたのは『アクトレス~女たちの舞台~』と『パーソナル・ショッパー』(共にフランスのオリビエ・アサヤス監督によるアートシアター系の作品で、スチュワートは前者でアメリカ人では初めてセザール賞助演女優賞を受賞)。『スペンサー』のPR目的のインタビューなのに本作は挙げなかった。

自分ばかりか自分の出演作まで、時には映画界全体も卑しめる態度は、彼女のメディア上のイメージやメディアとの関係を特徴づけてきた。

例外は『トワイライト』シリーズだ。2008年にスタートした同シリーズでスチュワートはバンパイアと恋に落ちる高校生ベラを演じ、一躍スターの座に。15年のインタビューではファンを引き付けてやまないシリーズ全5作品の魅力を愛情を込めて振り返っている。「作品の意図は変に純粋。『トワイライト』を悪く言いたい気持ちは分かるけど、私にはいつまでも誇らしく思えるところがある」

同感だ。メロドラマに浸れるし、2人の映画スターの誕生を目撃するのは純粋にわくわくする。スチュワートとバンパイア役のロバート・パティンソンは理想のカップル。均整のとれた顔の骨格ばかりか、実力にそぐわないつまらない役を大真面目で熱演しているところもそっくりだ。

子役時代から順調に積み重ねたキャリア

暗いベラのイメージが強すぎて忘れがちだが、スチュワートの映画界でのキャリアは長い。両親は共に映画関係者で、9歳で母親が関わっていた映画に一瞬だけ登場。10歳になる頃には初めてちゃんとした役をもらい、その翌年にはデービッド・フィンチャー監督の『パニック・ルーム』でジョディ・フォスターの娘役に抜擢された。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国産レアアースの対米輸出規制、完全撤廃の可能性低

ワールド

アラムコCEO、今年の石油需要は堅調持続 米中貿易

ビジネス

マネーストックM3、4月は前年比0.1%増 18年

ビジネス

見通しはすぐに覆る可能性、政策経路「いつでも変わり
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    大叔母「麗人・アン王女」を彷彿とさせる、シャーロッ…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 3

    世界がくぎづけとなった、アン王女の麗人ぶり

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:2029年 火星の旅

特集:2029年 火星の旅

2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日