最新記事

インド

結婚するまで「生理」の存在さえ知らなかった男たち──大物俳優、ナプキンを着ける

It’s a Bird! It’s a Plane! It’s Menstrual Man!

2018年10月02日(火)12時45分
アビゲイル・ジョーンズ

学校を中退して溶接業を始め、草の根革命を起こしたムルガナンタムはある種のスーパーヒーローだ。途上国では、女性の生理は最も軽視されてきた人権問題だ。生理用ナプキンを使っているインド女性はわずか12%。代用品として使われるぼろ布は、性病の原因になりかねない。

828india02-nww.jpg
「ナプキン革命」を起こした社会起業家ムルガナンタム

ムルガナンタムの革命は結婚直後、妻がぼろ布を使っていることに気付いた98年に始まった。ナプキンを買えば家族が飲む牛乳を買えないという残酷な現実があった。ムルガナンタムは6年かけて月経について学び、さまざまな解決策を試みた。

女子生徒が退学する理由

あるときは人工の「子宮」(動物の血液を入れたゴム製の袋)を作り、自分の下着に装着して5日間、徒歩や自転車で動き回った。クマールはこの場面の撮影について、「興味深い1日だったよ」と笑う。

周囲の人々はムルガナンタムが正気を失ったと思い、妻も離れていった。だが現在、彼のシンプルな生理用品製造機はインドを含む18カ国で2500台以上が稼働中。多くの貧しい女性がこの機械でナプキンを作り、販売する事業を立ち上げた。

タイム誌は14年、世界で最も影響力のある100人の1人にムルガナンタムを選んだ。インド政府は17年、傑出した社会活動の功績をたたえてパドマシュリー賞を授与した。

カンナーとクマールは撮影現場でムルガナンタムと密接にやりとりして、映画が細部まで正確に再現できるようにした。最大の課題は出演者の確保。インドの男性は女性の生理に嫌悪感と恥の感情を示すことが多い。生理用ナプキンを手に持つ演技を要求されたある男優は、2日間の撮影後に出演を辞退した。

インドでは、女子生徒の5人に1人が生理用ナプキンを買えないという理由で学校をやめてしまう。「(政治家は)全ての公的機関に無料のナプキンを用意することを義務付けるべき」と、カンナーは言う。「水道やせっけんと同じようにね。だって必需品なんだから。(ムルガナンタムのように)彼らも血を入れた袋を装着してみればいい」


『パッドマン 5億人の女性を救った男』
(C) SonyPicturesJapan
2018年12月7日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

[2018年2月13日号掲載]

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:イラン戦争でインフレ再燃、トランプ政権に

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、中東停戦維持期待で安全資産

ワールド

イラン交渉団がパキスタン到着、レバノン停戦要求 米

ビジネス

米国株式市場=まちまち、中東交渉控え様子見 ハイテ
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    「黒人を差別する白人」の動画を拡散されて、すべて…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 3

    「自由すぎる王族」レディ・アメリア・ウィンザーが「…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    エリザベス女王が「リリベット」に悲しみ、人生で最…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失っ…

  • 3

    「自由すぎる王族」レディ・アメリア・ウィンザーが「…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    セレブたちがハロウィンに見せた本気コスプレ、誰が…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプの大誤算

特集:トランプの大誤算

2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない