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「EVを売るだけではダメ」 日産が自動車メーカーでなくなる日

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2018年6月26日(火)12時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ 広告制作チーム

一般に、自動車の95%は停まっている状態にあるという。そこで、地域のEVを束ねて太陽光などで発電した電力を蓄え、夜間にそれを使うというアイデアが生まれた。このオペレーションがうまくいくと、そこに発電所が存在するのと同じことになる。これを「バーチャルパワープラント(VPP)」、つまり仮想の発電所と呼び、同社は既に東京電力や関西電力などと実証実験に入っているという。

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バーチャルパワープラント(VPP)実証実験の概念図。「アグリゲーター」は電力会社と一般利用者の間に位置する事業者で、電力の需要と供給を最適化する役割を担う

EVにできることは、電力を蓄えることだけではない。電力を運ぶこともできる。林氏はそんな事例をいくつか挙げた。

「長崎県には、赤潮発生を確認するための水質検査に日産のEVを使っている事例があります。EVにはコンセントがあるから、試験場まで海水を持ち帰らなくても、海岸のその場で検査ができる。また、風力発電の風車の点検をするために、EVとドローンを有線でつないで給電しながら飛ばしているという事例もあります」

仮想の発電所であり、移動発電所にもなるEVは、確かに暮らしを大きく変える可能性を持っている。EVの未来と可能性をしっかり見るために、再びフォーラムの会場に戻りたい。

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EVを売るだけではない、日本各地での日産の取り組みを紹介する同社専務執行役員の星野朝子氏

EVで社会を変えるための、さまざまな取り組み

冒頭に紹介したフォーラムで、スキラッチ氏に続いて登壇したのが日産自動車で専務執行役員を務める星野朝子氏。

「現在は100年に一度の変革期であり、EVは単なる移動手段ではなく社会を変える可能性を持つ存在です」と冒頭で述べてから、日産による未来社会への提言を実現するための具体策を示した。

星野氏はまず、さらなる充電設備の充実が必要との見方を示した。その一例が、電機メーカーのNECとマンションデベロッパーの大京と連携し、マンションへの充電器設置を進める事例。また、イオンと協力して、ショッピングモールにおける充電設備の拡充を進める取り組みも紹介した。

EV用のリチウムイオン電池の弱点のひとつは、経年劣化すること。使い方に大きく左右されるので「何年・何万キロで交換」とは一概には言いにくいが、長い間使っていると電気の減りが早くなるのはスマートフォンと同じだ。

そこで日産は、福島県浪江町にバッテリーの2次利用を行うための専用工場を設立したという。EV用の使用済みリチウムイオン電池を、大型蓄電装置やフォークリフトなどで使えるように再生するのだ。EV用の電池を再生するための専用工場は、日本初とのことだ。

公共交通や官公庁の車両にEVを使う取り組みも進めており、九州産交バスの熊本営業部では「よかエコバス」というネーミングで、中古バスをEV化している。また、熊本県のおしろタクシーでは日産リーフを導入しているほか、福岡県警ではパトカーに日産リーフを採用している。ちなみに、夜間も静かに走ることから "EVパトカー" は好評だという。

星野氏は「日本を美しい先進国にしたいが、それにはEVを売っているだけではダメです」と述べ、日本電動化アクションを推進すると宣言。この活動の名称を「ブルー・スイッチ」にすると発表した。

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EVを活用しながら日本をより良くするための包括的な取り組みを、「ブルー・スイッチ」と名付けた

取材を通じて感じたのは、日産が従来の自動車メーカーの殻を破りつつあるということだ。VPPで発電や蓄電をマネージメントし、住宅や公共交通といった分野にも積極的に取り組んでいるのだ。

自動車メーカーからの脱皮とまでは言わないまでも、日産が新しい自動車メーカー像を示しているのは間違いない。世界で初めて量産EVを世に送り出したことが、日産が変わる大きなきっかけになったのである。

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フォーラムで発表された、「ブルー・スイッチ」の象徴となる日産リーフのオープンモデル。残念ながら市販の予定はない

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フォーラムでは小池百合子東京都知事も登壇。2030年までに東京都内でのCO2排出量を30%減らすための取り組みを紹介した

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国内外で長年充電インフラの整備に取り組んできた、東京電力ホールディングス経営技術戦略研究所の姉川尚史所長も登壇

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コカ・コーラ ボトラーズジャパンの吉松民雄代表取締役社長は、調達、製造、物流・輸送、販売の全てでCO2の削減に取り組むと語った

Text:サトータケシ
Photo:遠藤 宏(フォーラム)、馬場淳郎(インタビュー)

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