医療を取り巻く社会的課題を解決に導く「精密データ」の力
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少子高齢化や人口減少を背景に、現在の日本の医療は社会保障費の高騰や、医師をはじめとする医療資源の不足・偏在、それに伴う地域ごとの医療格差など多くの課題を抱えている。今や、新たな医療提供体制の構築は必須の状況だ。
さらにコロナ禍で、医療機関への受診を避ける人が増え、その弊害として癌など重篤疾患の発見の遅れといった新たな問題が生じている。また感染者を受け入れる病床の逼迫など、日本の医療提供体制の脆弱性が改めて露呈された。低コストで、いつでもどこでも迅速に医療を提供できる仕組みが今ほど求められている時代はない。
こうした状況下で、オンラインでの健康・医療サービスを求める声が高まっている。その声に応え、従来の医療のあり方を変える可能性を秘めているのが「デジタルヘルス・エコシステム」だ。高性能な半導体ICの開発・提供で多くの実績を持つグローバル企業アナログ・デバイセズ(ADI)は、医療の課題解決と進化には、医療現場・研究機関・企業(医療ビジネスへの参入を検討中の企業含む)などによる新たな医療価値の創出を可能にするエコシステムが必要と考え、今まさにその構築に向けた活動に注力している。
「患者が医療機関に集まって診断を受けるという流れから、デジタル技術を駆使して患者を中心に据えた医療システムを作ることが、医療の財政問題や医師不足などを解決する上で必要だと考えています」と同社デジタルビジネス フィールドアプリケーションエンジニアの上村英之氏は指摘する。
デジタルヘルス・エコシステムとは、遠隔で患者の健康状態を常時モニタリングする新たな医療システムといえる。患者が装着したデバイスから収集した生体情報をクラウド上に集約し、そのデータを医療機関や研究機関が評価・解析して患者に助言などを行う。健診受診者の健康管理や、患者の治療後の経過観察などへの活用が可能となる。
医師や研究者が使える未加工・高精度のデータ
近年、数多くのウェアラブルデバイスが登場し、日常の健康管理ツールとして使われている。だが、医療者が患者の状態をスポット的に計測するデバイスはあるものの、長時間、連続的に計測でき、真の生体信号に含まれる科学的事実を解析するためのデータとして使えるデバイスはまだ少ない。これが、日本でエコシステムの普及が進みにくい要因の一つと考えられる。
「多くのウェアラブルデバイスは、入手した生体情報をデバイス内またはアプリ内で一般ユーザーが分かりやすい形に加工・処理して出力します。つまり個人の健康管理が主な目的であり、医療・研究機関での使用を想定したデバイスはほとんど見られません」(上村氏)
一方、ADIが医療・研究機関向けに開発した評価用ウェアラブル・プラットフォーム「ADI Study Watch」は、医療現場で実際に計測される生体信号とほぼ同等の「生のデータ」を取得でき、屋内外において様々なユースケースで長時間・連続的に使用でき、かつデータをデバイス内蔵のメモリに保存できる仕様になっている。これは、医療・研究機関での研究を加速させる手助けになる。