最新記事

テクノロジー

クロームキャストでケーブルTV断ち?

テレビ端子に差し込むだけでネット動画がテレビで見られる35ドルのケーブル・キラーが登場

2013年8月23日(金)12時48分
ブライアン・リース

こんなに簡単 これをテレビに差し込むだけでスマホのネット画像をテレビに飛ばせる Beck Diefenbach-Reuters

 筆者は「ケーブル断ち」をしている。つまり、ケーブルテレビ(CATV)に加入していないということだ。

 今は、テレビ番組の再放送ならいつでも好きなときにネットで見られる時代。それなのにCATVに高い加入料を払い続けるのはばかばかしいと気付いたからだ。そこでタイム・ワーナー・ケーブルに電話して解約した。ケーブル中毒を断つと決めたのだ。

 ネット配信されているテレビ番組を見るために、便利なアプリや機器を探し求めた。最終的には、大型プロジェクターとサラウンド、それにネットフリックスや「HBO GO」などの定番オンライン動画配信サービス、それらをストリーミングするのに最適なプレーヤー「Roku」を組み合わせたホームシアターが出来上がった。

 これにはとても満足だ。だがとても重要な何かが欠けていた。もはや私たちの生活になくてはならないものが。YouTubeだ。
 
 あれこれ試したが、YouTube動画をテレビ画面にストリーミングする方法はどうしても見つからなかった。Rokuにも公式アプリはなく、非公式のアプリではYouTubeのほうから再生を拒絶される。

 だが、YouTubeを06年に買収したグーグルも、実はこの問題に取り組んでいたことが分かった。7月下旬の記者会見で、驚きの新製品「クロームキャスト」を発表したのだ。

 高解像度テレビのHDMI端子に差し込むだけで、パソコンやスマートフォンで見ているネット映像をテレビ画面にストリーミングすることができる。もちろん、YouTubeの動画もだ。

数分で売り切れる人気

 価格もたった35ドルで、「グーグル奇跡のデバイス」「テレビの未来」「アップルTVキラー」と絶賛された。

 グーグルのオンラインショップでは数分で売り切れてしまったが、幸運にも私はアマゾン・ドットコムで1つ手に入れることができた。クロームキャストの強みはシンプルさだ。商品の箱にも書いてあるように「オンライン動画をテレビで見る最も簡単な方法」だ。

 確かにセットアップも簡単だった。YouTubeからの記念すべき初ストリーミングには、好きなバンドのライブ映像を選んだ。まるで魔法のようにうまくいった。画質はそこそこだが、音はきれいだった。

 もちろん問題もある。クロームブラウザのタブに表示されている動画をテレビ画面に飛ばす「キャスト・ア・タブ」という機能を使おうとすると、解像度が下がってしまって何の画像か分からなくなってしまう。ただし、まだベータ版なので次のバージョンに期待したい。

 今の段階でクロームキャストに対応しているのは、YouTubeとネットフリックス、グーグル・プレイという3つの主要な動画サイトだけだ。だが将来性に期待して、次々に新しいメディア企業が手を挙げている。

 クロームキャストがわが家のRokuに代わることはないだろう。Rokuは本当に優れものでとても手放せるものではない。それでもちょっとYouTube動画を壁に映してみたいだけ、という中継ぎ的な役割は果たしてくれるかもしれない。

 それにたった35ドルでケーブル断ちができるのなら、使ってみる価値はある。RokuやアップルTVのようなストリーミング専用プレーヤーを持っていないならなおさらだ。持っていたとしても、無尽蔵のYouTube動画をテレビ画面で見られる価値は大きい。

[2013年8月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P500ほぼ横ばい、月間では23

ワールド

日本と関税巡り「率直かつ建設的」に協議=米財務省

ワールド

再送トランプ氏、中国の関税合意違反を非難 厳しい措

ビジネス

FRB金利据え置き継続の公算、PCEが消費の慎重姿
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中