コラム

未来を考えるため、Instagramで「東北」を発信し続ける

2016年03月11日(金)06時05分

放射線汚染の食物連鎖の中で生存しなければならない、巣から落ちていたツバメの子ども。津波で破壊されたままの福島県浪江町請戸小学校で。2014年7月。From Q. Sakamaki @qsakamaki

 今回紹介する写真家はQ. サカマキ、私自身である。このブログで、3.11に絡んだ写真を紹介してほしいという依頼をNewsweek Japanから受け、唐突にそうなってしまった。恥ずかしいが光栄でもある。

 私がインスタグラムをやり始めたのは3年と少し前だ。きっかけは同じフォトエージェンシー、リダックスの同僚、マーク・ピーターソンの勧めによるものだが、もう一つの理由があった。その年に喉頭癌が発覚したことだ。

 第一ステージだったため、治癒できたが、再発や転移の恐れがあり、大きなストレスを抱えていた。それが、なんとかコントロールしていたと思っていた過去の戦場や紛争地での経験までPTSDとして噴出させ始めていた。そうしたネガティヴなものを可能な限り抑え込むため、いってみればある種のセラピーとしてインスタグラムを始めたのである。

 同時にそのセラピーは、写真そのものをさらに発展させるためでもある。スタイルとしては、ほとんどドキュメンタリー形式をとっているが、数年前から身体のどこかに響き始めていたものを絡ませている。写真は写真じゃないという概念だ。

津波と原発惨事を経験しながらも福島いわき市久之浜地区に住み続けることを決心した若い世代。2015年5月。


津波によって破壊された5年前とほぼ変わらない状態の宮城県仙台の荒浜地区。2016年2月。


プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金正恩氏、北朝鮮の国際的地位を強調 党創建記念式典

ワールド

再送-インタビュー:日銀の追加利上げ慎重に、高市氏

ビジネス

訂正-バーFRB理事、追加利下げに慎重 インフレ上

ビジネス

米国株式市場=下落、決算シーズン控え上昇一服
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 5
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 6
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 9
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 10
    【クイズ】イタリアではない?...世界で最も「ニンニ…
  • 1
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 9
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 10
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story