Picture Power

民族の歴史を刻むエストニアの祭典

Singing for Freedom and Identity

Photographs by Bill Frakes

民族の歴史を刻むエストニアの祭典

Singing for Freedom and Identity

Photographs by Bill Frakes

先月行われた5年に一度のエストニア「歌と踊りの祭典」。手を上げて歌う人々

 白地に鮮やかな刺繍を施した民族衣装の女性や、黒い帽子にひざ丈パンツ姿の男性たちが広大な野外会場を埋め尽くし、次々に歌や踊りを披露する。バルト海に面したエストニアの首都タリンで、5年ごとに開催される歌と踊りの祭典「ソング・フェスティバル」が今年7月に行われた。3日間の会期中、世界中から観光客が押し寄せ、民族色豊かな祭典を堪能した。地元のエストニア市民にとっては民族の絆と伝統文化、そして生と自由を謳歌する場だ。

 この祭典が初めて行われたのは1869年。その後も1879年から1910年までの間に6回開催され、その度に文化的・経済的な目覚めと発展を促す上で大きな役割を果たした。

 5年ごとに開かれるようになったのは、ソ連から独立した後だ。独立運動が高まった1988年、エストニア市民は昔からフェスティバルが開かれてきた会場に集まり、愛国精神あふれる曲を歌いながら政治的要求を訴える「歌う革命」を始めた。同年9月には30万人以上の集会に膨れ上がった。歌の力でソ連の支配から自由になれる----そんな強い思いが市民の間にはあったのだろう。

 2003年にはユネスコの無形文化遺産にも登録された。今年のスローガンは「時に触れられる、触れる時間」。エストニアの詩人クリスティーナ・エヒンの歌「触れる」から着想を得たものだ。手で、心で触れ合って動かされること。すべての人に影響を与える何か大きい存在の一部になることを表している。

Photographs by Bill Frakes

関連サイト:
ビル・フレイクス(ニコン)


【お知らせ】
『TEN YEARS OF PICTURE POWER 写真の力』
PPbook.jpg本誌に連載中の写真で世界を伝える「Picture Power」が、お陰様で連載10年を迎え1冊の本になりました。厳選した傑作25作品と、10年間に掲載した全482本の記録です。
スタンリー・グリーン/ ゲイリー・ナイト/パオロ・ペレグリン/
本城直季/マーカス・ブリースデール/カイ・ウィーデンホッファー/
クリス・ホンドロス/新井 卓/ティム・ヘザーリントン/
リチャード・モス/岡原功祐/ゲーリー・コロナド/アリクサンドラ・
ファツィーナ/ジム・ゴールドバーグ/Q・サカマキ/東川哲也 ほか

MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中