Picture Power

内戦終結から10年 傷癒えぬリベリア

CHILDREN OF STRIFE

Photographs by Kuni Takahashi

内戦終結から10年 傷癒えぬリベリア

CHILDREN OF STRIFE

Photographs by Kuni Takahashi

(2003年)政府軍が反政府勢力と激しい戦闘を行っていた首都モンロビアのウォーターサイド・マーケット

 西アフリカに位置する、人口約410万人の小国リベリア。この国では80年代終わりから00年代にかけ断続的に政府軍と反政府勢力による戦いが起きた。20万人以上の死者を出したその内戦が終結してから、今年で10年が過ぎようとしている。

 05年にアフリカ初の女性大統領として選出されたエレン・サーリーフの下、現在のリベリアは復興の道を歩みだしている。10年前と現在の街の風景や人々の様子は明らかに違う。戦闘の最前線だった首都モンロビアのウォーターサイド・マーケットでは銃弾で穴だらけになった壁が撤去され、人や車でごった返している。

 しかし、人々の生活から戦争の影が完全に消え去ったわけではない。失業率は80%に達しており、雇用や貧困対策はほとんど進んでいない。経済復興の恩恵を受けているのは主に富裕層で、中流層以下の生活水準は以前とほとんど変わっていない。

 「平和になったのはいいが、生活は楽にならない」。それが、多くの市民に共通した不満だ。平和が続けば、いずれ内戦の記憶も風化し、銃を手に戦った少年や少女たちのことも忘れ去られるかもしれない。だが、戦争に傷つけられた彼らの人生を取り戻すことはできない。

Photographs by Kuni Takahashi

<本誌2013年5月14日号に掲載>

関連近刊本:
「戦争がなかったら」高橋邦典(ポプラ社刊)
内戦下で小さな手に銃を携え戦った少年兵たち、砲弾で右手を失った少女、それぞれの10年を丁寧に追った記録。国のために戦ったのに、戦争が終われば政府からの補償もなく見捨てられたーー多くの元少年兵たちは、苦い思いを抱きながら、ただ食いつなぐだけの日々を送る。教育の機会を奪われた彼らは未来に希望を見いだせず、いつまでも戦争の闇の中を生きている。

MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 2
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあるがなくさないでほしい
  • 3
    映画『K-POPガールズ! デーモン・ハンターズ』が世界的ヒット その背景にあるものは?
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 6
    BAT新型加熱式たばこ「glo Hilo」シリーズ全国展開へ…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    就寝中に体の上を這い回る「危険生物」に気付いた女…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    シャーロット王女とルイ王子の「きょうだい愛」の瞬…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 3
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 8
    脳をハイジャックする「10の超加工食品」とは?...罪…
  • 9
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 10
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中