コラム

「増税原理主義者を打破する機会」トランプ関税は日本の国難、だが災い転じて福となすかもしれない

2025年04月15日(火)18時55分

FRBによる利下げが続けば、日本企業の売上・利益が減る

極めて大規模な関税引き上げの副作用の大きさを、いずれトランプ政権は認識することになり、関税政策は修正を余儀なくされるだろう。とはいえ、FRB(米連邦準備理事会)による利下げ政策は6月会合にも始まるとみられ、これが経済成長を下支えする中で深刻な景気後退には至らない、と筆者は予想している。

ただ、この想定は楽観的かもしれない。トランプ大統領は、昨年言及していた水準を超える関税引き上げを目指している。関税の引き上げは短期的・長期的に米国経済を衰退させる政策でしかないが、トランプ大統領らは「関税引き上げで米国が偉大になる」という幻想を抱いているように見える。

株安がしばらく続いても、大統領選挙の勝敗を左右するラストベルトの企業を守るために、貿易の抑制を続けるべきと判断するのではないか(それが、成功するとは思えないが)。

今後の世界経済は、トランプ政権の関税政策に左右されるが、日本経済も当然ながら大きな影響を受ける。もともと2024年の日本経済はゼロ成長にとどまっている。家計所得増が消費支出拡大をもたらす「好循環」は実現しておらず、企業利益だけが増えていた。

こうした中で、日本の基幹産業である自動車を中心に製造業の環境は、関税引き上げによってかなり悪化するだろう。筆者が予想するどおりに6月会合からFRBによる利下げが続けば、為替市場ではドル安円高が進み、日本企業の想定レート(1ドル147円)対比で円高が定着して、企業の売上・利益を減らすことになる。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

カーライル、ルクオイルのロシア国外資産の買収を検討

ワールド

米、中南米からの一部輸入品で関税撤廃 コーヒーなど

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米株急落の流れ引き継ぐ 

ワールド

米航空便、14日の減便は当局の要件6%を下回る 遅
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 5
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 10
    「ゴミみたいな感触...」タイタニック博物館で「ある…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story