アングル:米中間選挙の鍵握る若年男性層、物価高・移民政策でトランプ支持に陰り
写真中央はロイターのインタビュー後、写真撮影に応じるタイラー・ウィッツガルさん。3月2日、米ニューハンプシャー州マンチェスターのセントアンセルム大学で撮影。REUTERS/Aleksandra Michalska
Nathan Layne Aleksandra Michalska
[マンチェスター(米ニューハンプシャー州) 9日 ロイター] - 米東部ニューハンプシャー州マンチェスターのセントアンセルム大学。歴代米国大統領に関するあらゆる書籍が並ぶ図書館に、2024年の大統領選でトランプ氏に投票した6人の男子学生が集まった。「慎重な支持」から「失望」まで、2期目に対する評価は割れた。
移民取り締まりに対する批判や、物価対策への不満などを挙げた彼らの声はごく一部だ。ただ、11月に中間選挙を控えたトランプ大統領が今、若い男性からの支持を失いつつあるという米国全体の変化を映し出している。
世論調査が示す支持の軟化は、トランプ氏の政策に対する不満を反映し、上下院でわずかに保っている過半数を維持したい共和党にとっては痛手になりかねない。
若年層の投票動向を追うアナリストらはロイターに対し、トランプ氏が大統領に返り咲いた昨年1月以来、多くの若い男性から自身の経済的な先行きに目立った改善がほとんど感じられないという声が上がっていると話す。
2年生のタイラー・ウィッツガルさん(20)は図書館で、トランプ氏は数々の成果を上げている一方で、日常生活を左右する物価高騰などの問題では期待に応えていないと語った。
「卒業しても多額の借金を抱えることになる。しばらくは家も買えない」と、トランプ氏の国内経済政策に対する失望を明かした。評価は「C、もしくはCプラス」だという。
それでも彼らは全員、トランプ氏に投票したことを後悔してはいないと口をそろえる。民主党候補のカマラ・ハリス氏が当選しても、移民政策は抑制されず、政府支出は膨らむ一方だっただろうと語った。
しかし、イアン・ポムフレットさん(20)のような熱心な支持者ですら、トランプ政権の移民政策には懸念を示している。学生パネルディスカッションでポムフレットさんは、移民・税関捜査局(ICE)の捜査官が移民摘発で「過度に攻撃的な手法」を用いていると批判した。
「ICEの問題は重大だ」と、ミネソタ州ミネアポリスでICE捜査官に射殺された市民2人を例に挙げた。「襲撃や射殺、即時の強制送還より、もっと良い方法があると思う」
ポムフレットさんは依然として、トランプ氏をおおむね支持している。評価は「Bプラス」だという。
ロイター/イプソスの世論調査によると、2月時点で18ー29歳の男性のうちトランプ政権への支持を表明したのは約33%と、前年同月の43%から低下している。調査機関ピュー・リサーチ・センターの出口調査分析によれば、24年の大統領選挙では若年男性層の46%がトランプ氏に投票し、20年から7%票を増やした。
下院選挙を担当する共和党ストラテジストは、CBSニュースによる2月の調査を引用し、若い有権者の43%が共和党の立場を「主流」と見なしていると指摘。この層で少なくとも40%の支持を獲得できれば中間選挙での勝利は確実だろうと語る。
中間選挙における若年層の投票率は歴史的に低い。22年は4分の1と、全体の半分の水準だった。
それでも若年層は接戦の行方を左右し得る。世論調査の専門家ジョン・デラ・ボルぺ氏は、18年には銃乱射事件が相次いだことを受けて若年層の投票率が伸び、民主党が10議席以上を奪還する一因になったとの見方を示す。
「この15ー16カ月のあらゆる証拠を見ると、この層を現時点で信頼できる共和党票として数えることはできない」とボルぺ氏は言う。「彼らが日常生活で、明確な改善を体感できていないことが主な理由だ」
<大統領に続き、共和党もTikTok進出>
トランプ氏は24年の大統領選で「インフレ抑制」、「経済成長促進」、「移民取り締まり強化」という公約を掲げ、同氏が主導する「米国を再び偉大に(MAGA)」運動へ若い男性層を引きつけた。スニーカーのイベントに出席したり、ジョー・ローガン氏やテオ・ボン氏ら人気ポッドキャスターと対談を行ったり、TikTokに投稿したりといった一連の行動も、若年男性層の注目を集め、支持基盤の強化につながったと政治アナリストらは分析する。
共和党全国委員会(RNC)は先月、TikTokに公式アカウントを開設した。米国では現在、30歳未満のおよそ6割がTikTokを利用しているという。
24年の選挙でトランプ陣営の若年男性向け戦略を支援したメディアコンサルタントのジョン・ブラベンダー氏は、11月の中間選挙の投票用紙にトランプ氏の名前が載らない以上、共和党候補は株価動向のような大づかみの指標ではなく、減税など20代に直接恩恵のある政策をもっと語る必要があると指摘した。
「率直に言うなら、若年層の心に直接訴えかけるための努力が、共和党全体で不十分だったと言わざるを得ない」とブラベンダー氏は話す。
こうした指摘は、共和党の議員やストラテジスト、ホワイトハウス補佐官らの主張とも合致する。トランプ氏は外交政策より経済政策を重視すべきではないか、という点だ。世論調査でも有権者は、経済分野に対して最大の関心を示している。
<若年層有権者の「争奪戦」に>
若年有権者の関心をめぐる争いは、ニューハンプシャー州の上院予備選にも及んでいる。民主党が何としても議席を守りたい激戦4区のうちの一つで、現職が立候補しない選挙区だ。
民主党の有力候補であるクリス・パパス下院議員(45)は、10月にTikTokアカウントを開設。若年層有権者の主な懸念事項となっている住宅価格の高騰に言及した投稿を複数行うなど、フォロワー獲得を目指している。
「20代にとって今、マイホームを持つことは夢のまた夢だろう。手の届く夢だという実感を増やしたい」
パパス陣営は若年層有権者との接点拡大に向け、インフルエンサーらとのイベントを計画しているという。
共和党の指名獲得を目指すスコット・ブラウン元上院議員(66)は、ロックバンドでのギター演奏や、高校でのバスケットボールコーチといった、自身の趣味が若年層との接点になっていると明かす。
「若者と気軽にバスケをしたり、ステージで即興演奏をするのは、私には自然なことだ」とブラウン氏は話す。現在は17歳と26歳のスタッフ2人が「ソーシャルメディアの達人」としてサポートしているという。
ブラウン氏は今月、同州の予備選初期において政治討論の中心地となるセントアンセルム大学の政治研究所で講演を予定している。
学生は毎日、授業のために同研究所を通る。廊下には歴代大統領が訪問した際の写真が飾られ、半世紀以上にわたる政治記念品が所狭しと並ぶ。多くは、より友好的な超党派での協力が見られた時代のものだ。
ロイターが取材した学生からは、より礼節ある議論の復活を切望しているとの声が複数上がった。現政権による政策の多くを支持しつつ、政権への批判や民主党を容赦なく敵視する姿勢には嫌悪感を示した。それでも、取材した学生全員が、中間選挙では依然として共和党に投票する可能性が高いと述べた。
1年生のタイラー・デラニーさん(19)は民主党が予想通り下院の多数派を奪い返した場合、トランプ氏の分断的な手法はいずれ自身に跳ね返ってくると語った。
「どこかで超党派の協力が必要になる。中間選挙後、この問題がトランプ氏に重くのしかかると思う」
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