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アングル:節約とエコを両立、米で広がるフードロス削減アプリ
11月30日、米国の年金生活者スーザン・ティーフォードさん(66)は、お買い得な食品を求めて、賞味期限間近の値引き品を追いかけるようになった。特売品探しは、食費の節約だけでなく、ある美徳につながっている。ロサンゼルスで11月30日撮影。提供写真(2022年 ロイター/Too Good to Go/Handout via Thomson Reuters Foundation)
Carey L. Biron
[ワシントン 30日 トムソン・ロイター財団] - 米国の年金生活者スーザン・ティーフォードさん(66)は、お買い得な食品を求めて、賞味期限間近の値引き品を追いかけるようになった。特売品探しは、食費の節約だけでなく、ある美徳につながっている。
最近では、食料品を買う必要があるときにティーフォードさんがやることは、アプリ「フラッシュフード(Flashfood)」をチェックするだけだ。ティーフォードさんの地元ワシントンDC郊外アーリントンの店舗で賞味期限が迫っているあらゆる商品をリストアップしてくれる。
「ジャイアント」「マイヤー」といったチェーン店では、野菜、果物、パン、燻製の魚、精肉などの賞味期限が切れそうになると、いずれも通常の半額から3分の2の価格で販売されている。
その結果、パンデミック後に物価高騰が続いたにもかかわらず、ティーフォードさんの食費は低下した。それだけでなく、深い満足感も得られた。
「食べ物を捨てるのが嫌いで、掘り出し物が好き」とティーフォードさん。アプリを使って半額で入手したリブ肉を焼きながら、トムソン・ロイター財団の取材に応じた。
今年に入ってから食料品への出費を約450ドル節約できたという。話を聞いた隣人も、何人か同アプリに登録した。
「理にかなっている」とティーフォードさんは言う。「節約するのが当たり前になった」
フードロス防止アプリは、出費を抑えるだけでなく、温室効果ガス排出の削減にも役立っている。農業、食品加工、配送のすべてが化石燃料を消費し、食品生産の増加は森林破壊の主な原因になっているからだ。
国連によれば、世界では全人口に行き渡るだけの食料品が生産されているが、サプライチェーン上でその3分の1が失われるか廃棄されてしまう。毎年の食品廃棄量は、人口1人あたり平均74キロだという。
<食品価格の上昇>
フードロス削減アプリは何年も前からあったが、事情通によれば、コロナ禍からロシアによるウクライナ侵攻に至る最近の経済的混乱により、アプリの存在感が高まり、普及が進んだという。
フラッシュフードの対象店舗は現時点では北米各地の1500店舗、ダウンロード件数は約250万回だ。生活費危機による家計の圧迫を受けて、この1年だけで利用者数が40%以上急増したという。
ロシアによるウクライナ侵攻とサプライチェーンの混乱により食料品とエネルギーの価格が上昇する中で、米国では今年、インフレ率が1970年代以降最高の8%に達した。
政府のデータによると、米国の世帯の約10%にあたる1350万世帯が食料品の入手に不安を抱えているという。
各地のフードバンクを繋ぐネットワーク「フィーディング・アメリカ」によれば、コロナ禍に伴い、特に子どものいる家庭と有色人種コミュニティーにおいて、失業と貧困による飢餓が悪化しているという。
フラッシュフードを2016年に立ち上げたジョシュ・ドミンゲス最高経営責任者(CEO)は、「食料品価格が上昇するにつれ、このアプリへの関心が高まっていった」と語る。
それ以来、フラッシュフードは5000万ポンド(2万2700トン)以上の食料品が埋立地行きになるのを防ぎ、購入者は1億3000万ドル以上を節約できたという。
240店舗を擁する食料品チェーン、マイヤーのセピデー・バーケット店舗担当副社長は、「フラッシュフードは驚くほどの勢いで普及していった」と語る。
バーケット副社長によれば、マイヤーはこのアプリの初期導入テストで食品廃棄を10%削減できたという。2020年代末までに50%削減を目標にしているという。
<テクノロジーによるフードロス削減>
コロナ禍を契機として、食品廃棄とその対策への関心が高まったと語るのは、非営利組織(NPO)「リフェッド」でエグゼクティブ・ディレクターを務めるダナ・ガンダース氏。リフェッドは、構造改革を提唱し、2030年までに米国の食品廃棄・損失を半減させることを目指している。
「ここ数年で、フードロス削減のためのソリューションに向けた技術革新が爆発的に増えた。しかも、いくつかはすでに成功を収めている」とガンダース氏は言う。
これが「フライホイール(はずみ車)効果」を生み、2019年に5億ドルだった投資が、昨年は20億ドルにまで膨らんだという。
ガンダース氏によれば、フードロスという課題が解決されたわけではないという。未収穫の畑、家庭での食べ残し、風による落果、時間が経ってまずくなったパーティーフードなど、予測不可能で多岐にわたっているからだ。
だがガンダース氏は、「テクノロジーによる新たな機能のおかげで、実に多くの人々にリアルタイムで情報を拡散し、こうした食料品を(一部にせよ)利用できるようになった」と話す。
たとえば「トゥ・グッド・トゥ・ゴー(捨てるには惜しい、の意)」というアプリは、利用者がレストランやパン屋など地元店舗に5ドルの「注文」を送信すると、閉店時までに消費しなければならない食材が入った「福袋」が届くという仕組みで、非常に広い範囲で潜在的なフードロスを解消しようとしている。
トゥ・グッド・トゥ・ゴーは2016年にコペンハーゲンで誕生した。共同設立者であるルーシー・バッシュ氏は、「小売店側にはフードロスに対する解決策がなかった」と話す。
大規模慈善団体も頑張ってはいるが、都市部のパン屋を閉店間際に1軒1軒回るのは不可能だ。結果として大量に廃棄されている、とバッシュ氏は言う。
サービスの利用者は、通常、支払った額の3倍相当の食料品を入手できる。
「コロナ禍とインフレが大問題になる中で、定価の3分の1だけ払えばいいというのは大きい」とバッシュ氏。「こうすれば、経済的利益と環境への関心が両立する」
このアプローチは大きな魅力を発揮している。トゥ・グッド・トゥ・ゴーの利用者数は17カ国で約7000万人。毎日30万食分が救済されている。
NPO「フードレスキューUS」のメリッサ・スピースマン最高執行責任者(COO)は、コロナ禍によって米国人の間に身近な貧困への意識が高まったため、アプリは空腹を抱えた人々も救ってきたと指摘する。
「フードレスキューUS」は、農家やレストランその他と21州にわたる数千人のボランティアを結びつけ、余った食品を集めて炊き出し施設や避難所、飢餓救援団体に届けるアプリを運用している。
「コロナ禍の初期、企業の閉鎖や営業時間短縮が始まったので、至る所から電話が掛かってきた」とスピースマンCOOは言う。「大量の食料品で溢れかえった」
その後、サプライチェーンが混乱してくると、農家からも連絡が入るようになった。人手不足や、注文が途絶えたためだ。
「多くの人々の中で何かが目覚めた」とスピースマンCOOは語る。「自分たちの役に立つサービスの存在に気づく人が増え、何か良いことをしたいと考えるコミュニティーが増えた」
(翻訳:エァクレーレン)