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アングル:経済危機のスリランカ、タミル人は内戦直後並みの貧困
経済危機に陥っているスリランカで、少数民族タミル人のシンガラム・スーサイヤムスさん(44)は炎天下、借りているピーナツ畑の手入れにいそしんでいた。インフレで多くの生活必需品に手が届かなくなり、大地に鋤(すき)を打ちつけて生活苦と闘う毎日だ。北部の沿岸地域ムライティブで8月13日撮影(2022年 ロイター/Joseph Campbell)
[ムライティブ(スリランカ) 16日 ロイター] - スリランカの少数民族タミル人、シンガラム・スーサイヤムスさん(44)は炎天下、借りているピーナツ畑の手入れにいそしんでいた。インフレで多くの生活必需品に手が届かなくなり、大地に鋤(すき)を打ちつけて生活苦と闘う毎日だ。
「私は日雇い労働者よりも多くの困難を抱えている」と語るスーサイヤムスさんは、手のひらで体を支えて動き回っている。スリランカ政府と武装集団「タミル・イスラーム解放のトラ(LTTE)」による26年に及ぶ内戦末期の2009年、空襲で両脚を失い左腕も負傷したのだ。
スーサイヤムスさんが暮らす北部の沿岸地域ムライティブにとって、現在の経済危機は内戦末期の攻撃に続く2度目の大打撃をもたらしている。当時はこの地域の大半のタミル人が損害を被った。
多くの住民は日雇い労働で日々をしのいでいるが、自分にはできないとスーサイヤムスさんは言う。
「日雇い労働に申し込んだとしても、誰も私を雇ってくれないだろう。こんな状態で働けるだろうか」
経済危機に襲われる前、スーサイヤムスさんは漁師をしていた。しかし過去70年で最悪の危機で燃料が途絶え、ピーナツ農業に転じざるを得なくなった。
「自分はなんとか空腹に耐えるしかないとしても、子どもたちに『ほら、これしか食べるものは無いのだから、もう寝なさい』などと言えるだろうか」と嘆く。
国連食糧農業機関(FAO)の調べによると、スリランカでは約620万人が食料不足に陥っている。食品インフレが激しく、8月は93.7%に達したからだ。
スリランカ国民約2200万人はここ数カ月、停電、高インフレ、通貨ルピーの急落、外貨不足に苦しみ、食品、燃料、医薬品の輸入代金を払うのが困難になっている。
ムライティブはスリランカで2番目に貧しい地域だ。国際援助団体、セーブ・ザ・チルドレンが6月に実施した調査では、同地域の世帯の58%は貧困状態にあり、危機で全収入を失ったと答えた人の数は全国で最も多く、住民のおよそ4分の1を占めた。
全国で見ると成人の31%が、スーサイヤムスさんのように子どもを養うために食事の量を減らしたと答えた。
この地域の人々を支援している慈善団体ティアーズ・オブ・バンニの創設者、ソマ・ソマナサン氏(シドニー在住)は「この経済危機で、彼らは悪い方へ悪い方へと追いやられている」と話す。「内戦直後の状態に戻ったのも同然だ」という。
社会的エンパワーメント省のニール・ハプヒンネ担当相は、400万世帯を対象としている福祉措置を、経済危機で最も大きな打撃を被った世帯にも広げるとともに、毎月の直接現金給付の対象を60万人増やす計画を明らかにした。
今年はこれまでに320万世帯に513億ルピー(1億4600万ドル、210億円)を支給している。
アジア開発銀行(ADB)からの融資2億ドルも、食料危機の緩和に充てられる。政府は世界銀行や国連機関にも支援を仰いでいる。
夕暮れが訪れ、1日の労働を終えたスーサイヤムスさんは鋤を置いた。ピーナツ収穫の成否が分かるのは2カ月先だ。「物価が下がれば、これほど苦労はしないのに」とつらさを口にした。
(JEEVAN RAVINDRAN記者)