ニュース速報

ワールド

オミクロンにWHO警告、世界で移動制限強化 米はワクチン注力

2021年11月30日(火)09時28分

11月29日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」について、感染急増リスクが非常に高いとの認識を示した。写真はシドニーの空港で防護服を着用する渡航者(2021年 ロイター/Loren Elliott)

[ジュネーブ/ヨハネスブルク 29日 ロイター] - 世界保健機関(WHO)は29日、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン」について、感染急増リスクが非常に高いとの認識を示した。一方、国境を閉鎖する国が増え、2年間に及ぶパンデミック(世界的大流行)からの景気回復に影を落としている。

業界関係者によると、大手航空会社はオミクロン株が最初に検出されたアフリカ南部からの旅客輸送を制限し、ハブ空港保護へ迅速に行動。オミクロン株の広がりで規制が拡大するとの懸念が背景となっている。

しかし、航空会社の株価は市場全体の動きに連れて29日に反発。オミクロン株が当初の予測よりも危険性が低いのではないかとする見方が強まった。

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、需給バランスの改善に伴い高インフレは来年にかけて後退すると引き続き予想しているが、新変異株出現などにより先行き不透明感が増し、当初予想よりも長期にわたり物価が上昇を続ける可能性があるとの見方を示した。上院銀行委員会の証言原稿で明らかになった。

格付け会社のムーディーズとフィッチ・レーティングスは、オミクロン株で世界的な景気見通しが阻害されるほか、物価が押し上げられる恐れがあるとの警戒感を示した。

バイデン米大統領は、米国はオミクロン株への対応で十分な用意を整えているとし、必要に応じてワクチン開発を加速すると確約。ホワイトハウスの新型コロナ対策チームとの会合後「いずれは米国でもこの変異株の感染が確認されるだろう」とし、「この変異株は懸念すべきものだが、パニックを起こすべきものではない」と述べた。

さらに「この変異株を克服する」とした上で、オミクロン株の感染拡大阻止に向け、ロックダウン(都市封鎖)を再導入することはないと言明。国民にワクチン接種とマスクの着用を求めた。

米国はアフリカ南部8カ国からのほとんどの渡航者の入国を禁止。バイデン氏はこの渡航制限により、多くの人々にワクチンを接種する時間を確保できると述べた。

WHOは194の加盟国に対し、感染者の急増は深刻な結果をもたらす可能性があると勧告しているが、オミクロン株に関連した死亡者はまだ出ていないと説明。「オミクロン株は、これまで例のないほど多くのスパイクの変異がみられ、その一部はパンデミックにつながる潜在的影響に関連する」とし「新たな懸念される変異株(VOC)、オミクロン株に関連したグローバルリスクは非常に高いと判定されている」とした。

<さらなる研究が必要>

WHOは、オミクロン株がワクチンや感染によって獲得した免疫を回避する可能性については一段の研究が必要とした。

オミクロン株が最初に検出された南アフリカの感染症専門家は、これまでの変異株よりも重症化するかどうかを判断するのは時期尚早だが、オミクロン株の感染力は強いようだと述べている。

また、ニューヨークにあるコロンビア大学メールマン公衆衛生大学院のサリム・アブドール・カリム教授は、オミクロン株による重症化を阻止するには既存のワクチンがおそらく有効だとしている。

科学者らは、オミクロン株の深刻性を理解するには数週間かかると述べている。

カリム教授によると、南アフリカの感染者数は2週間前には1日300人程度だったのが、今週は1日1万人を超える見通しだ。

南アフリカのラマポーザ大統領は、アフリカ南部からの渡航規制を巡り、不当で非科学的、かつ発展途上国を苦しめるものだとして、各国に反対するよう呼び掛けた。

先進7カ国(G7)は保健相会合をオンラインで開催し、オミクロン株を検出し他国に警告を発した南アフリカを称賛した上で、オミクロン株の監視で連携すると発表した。

<市場の不安定化>

オミクロン株がワクチンに耐性があるのではないかという懸念から、26日の世界の株式市場では約2兆ドルの時価総額が吹き飛んだが、29日には日本政府がイスラエルと同様に外国人の新規入国を全面禁止すると発表したにもかかわらず、市場は落ち着いていた。

レモンド米商務長官は、オミクロン株が世界のサプライチェーンに影響を及ぼすかどうかを判断するのは、時期尚早という認識を示した。

日産自動車の米国部門広報担当者は「監視しているが、当社は新型コロナに関するかなり厳しいプロトコルを引き続き実施している」と述べた。

ポルトガルでは29日、リスボンのサッカークラブでオミクロン株の感染者が13人報告された。また、スペイン、スウェーデン、スコットランド、オーストリアでも初の感染者が報告されている。

グテレス国連事務総長は、オミクロン株の感染を踏まえ、複数国が水際対策として渡航制限に動く中、初めに症例が報告されたアフリカ南部諸国の孤立に懸念を表明した。

声明で「渡航や経済的関与を可能にするため、渡航者を繰り返し検査するなど、感染リスク回避を目的とする他の適切かつ真に効果的な措置を検討するよう、全ての各国政府に要請する」と述べた。

ロイターの集計によると、2019年12月に中国で最初の感染者が確認されて以来、210を超える国・地域で2億6100万人以上が新型コロナウイルスに感染したと報告されており、545万6515人が死亡している。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ヨルダンと西岸の境界検問所で銃撃、イスラエル軍兵士

ワールド

米、EUへの輸入依存加速 中国上回る=民間調査

ビジネス

再送(18日配信記事)-パナソニック、アノードフリ

ワールド

米・イスラエル、ガザ巡る国連職員の中立性に疑義 幹
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中