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アングル:失われるLGBT+の生命線、関連サイトに弾圧
8月31日、 ロシアが各都市で性的少数者によるパレード「プライド・マーチ」を禁止し始めると、「ロシアLGBTネットワーク」のミヒャイル・ツマソフさんはインターネットで情報発信を続けようと考えた。写真は2019年8月、ロシア・サンクトペテルブルクで行われたLGBTQの集会を警備する露当局者(2021年 ロイター/Anton Vaganov)
[ロンドン 31日 トムソンロイター財団] - ロシアが各都市で性的少数者によるパレード「プライド・マーチ」を禁止し始めると、「ロシアLGBTネットワーク」のミヒャイル・ツマソフさんはインターネットで情報発信を続けようと考えた。しかし、ロシアの当局はこの動きにすぐ追い付いた。
ツマソフさんによると、ロシアのネット規制当局はこの団体のサイトを何度も閉鎖しようと試みた。当局が盾に取ったのは、2013年に成立した「反ゲイ・プロパガンダ」法。LGBT+(性的少数者)に関する情報が子どもに広がることを禁じている。
団体は法廷に異議を申し立て、今のところ成功している。ツマソフさんはトムソンロイター財団の電話取材に、「従ってわれわれのウェブサイトはまだ残っており、社会におけるわれわれの居場所も維持されている。しかし、誰もがこのように成功しているわけではない」と語った。
3つの人権団体が今週、世界の状況をまとめた報告書を公表した。それによると、2016年半ばから20年半ばにかけ、ロシアでは32のLGBT+のサイトがプロバイダー上で1回以上アクセスできなくなった。
「アウトライト・アクション・インターナショナル」、「トロント大学市民ラボ」、「ネットワーク干渉オープン監視団(OONI)」の3団体がまとめた同報告書は、「最も頻繁にアクセスできなくなるのはLGBTIQ関連のニュースサイトで、次いで文化、人権関連のサイトだ」としている。
ロシアでは同性間の交際関係は合法だが、性的区別や性同一性に対する姿勢は今でもおおむね保守的だ。
同国は2020年の国民投票により、異性間の結婚しか認めない憲法改正が承認された。これにより、同性婚を支持する法律を将来制定する道は事実上閉ざされた。
トロント大学市民ラボの調査幹部、イレーネ・ポエトラント氏は、「政府はさまざまな方法でLGBTIQのウェブサイトをふるいにかける。法的手段と技術的手段を用いるのが典型的だ」と話した。
<「国家安全保障上の危険」>
報告書はロシアのほか、インドネシア、マレーシア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)に焦点を当てている。ポエトラント氏によると、これら6カ国を選んだのは、LGBT+関連のコンテンツを監視していることが分かっている国々だからだ。
報告書によると、こうしたサイトを禁じることは、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」の第19条に違反している。インドネシア、イラン、ロシアの3カ国はICCPRの署名国だ。
ICCPRは「すべての者は、表現の自由についての権利を有する。(中略)国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む」と定めている。
報告書によると、6カ国のうちLGBT+関連のサイトにアクセスできないようにした件数が最も多かったのはイラン(75件)で、次いでUAE(51件)だった。
インドネシア政府は5年前、LGBT+のサイト禁止に動くと表明。報告書によると、現在少なくとも38のサイトが閲覧できない。
「LGBTIQコミュニティは政府から、国家安全保障にとって危険であり、社会を織り成す倫理的結束を脅かすものとして位置づけられている」と、リニ・ズーリアさんは電子メールでロイターにコメントした。リニ・ズーリアさんはインドネシアにあるLGBT+の団体で活動している。
ロシアのツマソフさんは、LGBT+の人たちにとってインターネットは欠かせない社会的な生命線になっており、その弾圧は差別と人権無視を反映していると語る。「LGBTIコミュニティの言論の自由は、同性愛を嫌悪する人たちからの多大な脅威に苦しんでいる」と、ツマソフさんは話す。
(Hugo Greenhalgh記者)