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焦点:トランプ氏にうんざりの共和党員が大量離党、右傾化に拍車か

2021年02月23日(火)08時02分

2月18日、米共和党から党員の離脱が急増している。写真は2020年11月、ニューヨークで大統領選の開票状況を見守る共和党支持の少年(2021年 ロイター/Andrew Kelly)

[ワシントン 18日 ロイター] - 米共和党から党員の離脱が急増している。連邦議会襲撃事件をめぐるトランプ前大統領の言動に反発した穏健派党員が中心とみられ、来年11月の次回中間選挙の共和党候補者を決める党予備選で、共和党の右傾化がさらに強まる可能性がある。

離党者は、大都市周辺で左派色の強い郡に集中している傾向が強い。政治アナリストによると、穏健な共和党員が主な離党者であることを示唆している。

フロリダ、ペンシルベニア、ノースカロライナの各州では最近、計6万8000人余りが共和党員をやめたことが、州の有権者登録データで分かった。いずれも次回中間選挙後の連邦議会多数派維持を狙う民主党にとって、鍵を握る州だ。この離党者数は、同じ期間の民主党の約2万3000人に比べると3倍近い。

離党の動きが続けば、共和党の予備選で優位に立つのは、幅広い有権者の意向を反映する政治家ではなく、トランプ氏支持層に受けの良い政治姿勢を打ち出す候補者になるだろう。

<民主党員となる離脱者も>

スタンフォード大学の政治学研究者モリス・フィオリーナ氏は、次の中間選挙で共和党候補が民主党候補よりも多い票を集めるのは一段と難しくなる可能性があると予想。「穏健な党員が去って2度と戻ってこなければ、共和党にとって本当に悪いニュースだ」と話した。

州の有権者登録ベースでは、共和党を離れた人の大半は無党派として登録し直しており、さもなくば少数政党の党員と登録し直しているが、民主党員として登録し直した人も多い。

共和党離党者の急増は、大統領選で敗北した後もなお党の実質的なトップとして影響力を行使しようとしているトランプ氏の動きと軌を一にしている。トランプ氏は今週、上院院内総務で党の最重鎮のミッチ・マコネル氏を猛烈に批判。弾劾裁判を巡り、マコネル氏が無罪評決を下しながらも、トランプ氏には議会襲撃の責任があると発言したことに反発した。

共和党全国委員会の広報担当者は大量離党問題についてはコメントを拒否したが、「全米の国民は、共和党が彼らのために戦う党だと分かっている」と述べた。

<議会襲撃が「最後の一撃」>

ロイターが先の3州で40人弱の離党者を取材したところ、彼らの多くはトランプ氏の存在をその理由に挙げた。議会襲撃はもとより、その前から大統領選の不正を言い立てるトランプ氏を共和党議員が支持し続けてきた点も同党への反発をかきたてる一因となった。

弁護士を引退しフロリダ州ナッソー郡のジャクソンビル近郊に住むダイアナ・ヘプナー氏(76)は財政保守派を自認する共和党員だったが、トランプ氏の言動にうんざりしたと話す。

トランプ氏が持ち込んださまざまな要素を共和党は克服できると考え、何とか党員として踏ん張っていたが、1月6日の議会襲撃が離党を決める「最後の一撃」になったと説明した。代わって民主党員になったヘプナー氏は、今後の民主党の予備選挙に自分が中道主義者として影響を与えられたらいいと望んでいる。

ヘプナー氏が暮らすフロリダ州では、昨年12月半ばから今年2月半ばまでに、およそ4万人が共和党を離れた。依然として500万人強に上る同州の党員総数に比べれば微々たるものかもしれないが、そこそこの離党者数であっても、予備選が接戦になる場面では大きな違いをもたらす。フロリダやペンシルベニアのように、共和党の予備選に投票資格を実際の党員だけに限っている州では、なおさらだ。

実際、昨年8月18日にフロリダで行われた共和党下院議員候補の予備選では、得票差1500票未満で候補指名を獲得した2人が、11月の本選でも勝利した。そのうちの1人で、トランプ氏支持を公言したバイロン・ドナルズ氏は予備選で、800票弱のわずかな差で他のトランプ氏を支持する候補者や穏健派候補者ら8人との競争を勝ち抜いた。

<弱まる都市部の支持>

フロリダ大学の政治学研究者マイケル・マクドナルド氏によると、共和党内でトランプ氏に批判的な少数グループ、つまり弾劾決議案に賛成した下院議員10人や弾劾裁判で有罪票を投じた上院議員7人などにとっては、穏健派党員が減少すると予備選で対抗馬を退けるのがより困難になるのではないかという。

大量離党は、比較的裕福な人が住む地域で共和党支持が減退していることとも関係している。例えば都市近郊部などだ。そうした地域は昨年11月の大統領選挙でバイデン氏勝利を後押しした。

ペンシルベニアでは年明けから今月16日までに共和党を離党した1万9000人近くの半分以上が都市部や、主要都市部周辺の近郊で暮らす人々だった。一方、共和党にとどまっている人のうち、こうした地域に住む人の割合は4割程度にとどまる。フロリダとノースカロライナでも、離党者は大都市周辺に集中していた。

専門家は、大統領選後の数カ月でこれほどの規模で有権者の支持政党が変わるのは異例だとし、流出がさらに続くのか、逆に流入するようになるのかは見極める必要があると話す。一部の離党者が戻ってくる可能性もあるという。

一方で、金融会社重役でフィラデルフィア郊外のラファイエットヒル在住のロバート・アベルマン氏(56)は、大統領選ではバイデン氏に投票した。トランプ氏がまだ共和党を牛耳る状況に嫌気が差し、今月に離党し、支持政党はなしとして、つまり無党派層として有権者登録をし直した。アベルマン氏はいくつかの新党構想に関心を持っている。その中には共和党の幹部数十人が立ち上げを検討した中道右派政党のような構想も含まれている。

(Jason Lange記者、Andy Sullivan記者)

ロイター
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