ニュース速報

ワールド

英中銀、市場機能不全時に政府に融資へ 新型コロナで一時的措置

2020年04月09日(木)23時28分

イングランド銀行(英中銀)は9日、新型コロナウイルス対応の一時的な措置として、政府が国債発行による資金調達が困難になった場合、政府に資金を融資すると表明した。写真は3月20日、ロンドンで撮影(2020年 ロイター/Toby Melville)

[ロンドン 9日 ロイター] - イングランド銀行(英中銀)は9日、新型コロナウイルス対応の一時的な措置として、政府が国債発行による資金調達が困難になった場合、政府に資金を融資すると表明した。2008年の世界金融危機時に使った措置を再び導入する。

新型コロナ対応の経済支援策として、ジョンソン政権は大規模な財政出動と減税を打ち出し、国債発行を大幅に上積み。今週の100億ポンド(124億ドル)超の国債発行は順調に消化されたが、先月に英中銀が国債などの買い入れを発表する前の市場はかなり不安定だった。

英中銀は財務省との共同声明で「新型コロナで混乱している間、一時的措置として、政府のキャッシュフローを円滑にし、市場の秩序ある機能を支援するため必要に応じて短期の追加流動性原資を政府に提供する」と表明した。政府は中銀から資金を借り入れた場合は年末までに返済するとしている。

ベイリー総裁は以前、英中銀は財政ファイナンスに関与しないと述べていた。現在実施している量的緩和については、インフレ率を中銀の目標に合致させ続けるための措置などと説明している。

現在、英政府は中銀から4億ポンドの借り入れをしている。借入残高は金融危機の2008年に199億ポンドに膨れ上がったこともある。

共同声明は「政府は引き続き、市場を主たる資金調達の場とし、新型コロナ対応のための追加資金は、通常の債務管理業務を通じて全額調達する見込み」としている。

バークレイズの債券ストラテジスト、モイーン・イスラム氏は今回の措置について、前例のない政府による短期資金ニーズに対応するリスク管理とみることはできるが、財政ファイナンスという非難に扉を開いたと指摘。「経験からすると、一時的な措置が恒久的になったり拡大されたりすることがある」とし、世界金融危機時の大規模な国債買い入れが中銀の中核政策になっていると述べた。

<過去最高の国債発行>

英政府の債務管理庁は、4月23日に改正国債発行計画を発表する予定。一部エコノミストは、今年度(2020年4月─21年3月)の財政赤字が対国内総生産(GDP)比10%を上回り、第2次世界大戦後で最高になると予想する。

シティの市場ストラテジストチームは、新たな支出の財源確保と償還を迎える国債の借り換えに今年度は過去最高の2850億ポンドの国債発行が必要と試算している。

インベステックのエコノミスト、フィリップ・ショウ氏は、中銀の融資は、政府が合意通りに早期に返済しなければ、財政ファイナンスとみなされると指摘した。

今回発表した措置が、市場が機能不全に陥った場合のみに利用できるのか、それとも今後12カ月の債券発行ペースをならすために中銀から借り入れる、と政府が意図しているのか、現時点では不明だ。

2008年の世界金融危機時、政府はほとんど苦もなく市場から資金を調達できた。

インベステックのショウ氏は、今回は、レイオフのリスクがある労働者向け支援措置や、税収が先延ばしになる措置が打ち出されており、短期的な資金ニーズは予想が難しいと話す。

「今回の措置は、政府が必要な財源確保で可能な限り柔軟性を持ちたいという動機が働いているようだ」と語った。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア、対米関税「ほぼゼロ」提案 貿易協議で

ビジネス

訂正-日経平均は小反落で寄り付く、米市場休場で手控

ワールド

ルラ大統領、再選へ立候補示唆 現職史上最高齢で健康

ワールド

米テキサス洪水死者78人に、子ども28人犠牲 トラ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中