ニュース速報

ワールド

焦点:新型コロナが物流寸断、世界の陸海空でモノが大渋滞

2020年03月29日(日)07時12分

3月23日、西側諸国の物流業者が陸運、海運、空運のすべてで悪戦苦闘している。写真は17日、ドイツとポーランドの国境で検温を受けるトラック運転手(2020年 ロイター/Axel Schmidt)

[ロンドン/マドリード/ロサンゼルス 23日 ロイター] - 西側諸国の物流業者が陸運、海運、空運のすべてで悪戦苦闘している。新型コロナウイルスの世界的大流行により、西側各国政府が封鎖措置の導入を余儀なくされたためだ。イタリアなど感染が最も深刻な国では、医薬品など必需品の供給に支障が生じかねない事態となっている。

中国は新型コロナの感染拡大阻止で思い切った対応策を取り、国内経済が徐々に回復しているが、他の国・地域ではサプライチェーンが滞っている。

関係者によると、物流業界はトラック運転手の確保難や船員に対する規制、航空貨物の容量不足などさまざまな問題に見舞われ、円滑な配送が難しくなっている。さらに消費者の買いだめやパニック買いがサプライチェーンのひっ迫に追い打ちをかけている。

物流大手・アジリティの最高コマーシャル責任者、モハメド・エサ氏は「サプライチェーンの混乱は、東側から西側へと急速に移った」と話した。

物流業界の関係者によると、最も大きな打撃を受けているのが空運業界。航空機の運航停止が増えたためで、医薬品や生鮮品など主要商品の輸送に問題が起きている。エサ氏によると、通常なら2、3日の輸送期間が2倍に伸びている。

医薬品原料の輸送に空運を使っている欧州のサプライヤーは、航空機での輸送は難しいと説明した。

米国は外国人の入国禁止措置により、航空貨物の輸送能力が推定で85%低下した。大量の貨物を下部貨物室で輸送していた旅客機の運航が止まったためだ。関係者によると、運航を続けている旅客機の貨物スペースは限られ、貨物輸送のコストは5倍に跳ね上がった。

関係者によると、欧州から米国への輸送はメキシコやカナダを経由するルートに変更されたが、輸送時間が伸びてコストも上がった。

ヘルマン・ワールドワイド・ロジスティックスの最高コマーシャル責任者、ヨヘン・フリーゼ氏によると、欧州から米国への輸送コストは通常、1キログラム当たり1ユーロ弱だが、今は5ユーロから10ユーロと「大幅に上昇している」。

陸運業界でも国境通過に時間を要するようになり、特にイタリアなど新型コロナ感染の影響が甚大な欧州諸国との往来には時間がかかる。

ヘルマンのフリーゼ氏は「十分なトラック輸送能力を確保するために運転手の手当てを引き上げており、貨物リスクに絡むコストが上がっている。こうしたコストがさらに上昇するのは間違いない」と述べた。

スペイン人のトラック運転手、オスカー・プリエトさん(48)は、ガソリンスタンドがサービスを渋り、食事やトイレの利用で困った目に遭ったという。倉庫や工場に着いても施設に入れてもらえず、事務手続きの間、屋外で待たされた。「トラック運転手を犬のように扱うところもある」という。

イタリア交通・運輸同盟のグイド・ニコリーニ委員長によると、一部の国では国境管理によって越境に時間がかかり、運転手に認められた滞在時間が制限され、オーストリアなどの国境で問題が発生している。

スペインの物流業界団体の広報担当者は、全運転者に行き渡るだけのマスクや手袋が十分にそろっていないのが最も心配な問題だと述べた。

海運業界は、欧州や米国でコンテナが不足している。船員不足も船舶によるサプライチェーンに打撃となっている。

国際海運会議所(ICS)のガイ・プラッテン事務局長によると、世界各地で船舶が入港を拒否され、船員は交代が難しいため帰宅できない。

プラッテン氏は「渡航制限や国境封鎖、航空機による旅行のキャンセル、船舶での14日間以上の隔離措置などが今では当たり前になった。船舶を動かす船員がいなければ通商は成り立たないという事実は無視できない。つまり食品や医薬品、一次産品などがもはや港に届かず、消費者に直接影響が及ぶということだ」と話した。

(Jonathan Saul記者、Sonya Dowsett記者、Lisa Baertlein記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P反落、イーライリリーに売り ナ

ワールド

ロシア・ウクライナ首脳会談、米ロ会談の条件でない=

ワールド

トランプ氏、401kのオルタナ投資解禁の大統領令に

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、次期FRB議長最有力候補に
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの母子に遭遇したハイカーが見せた「完璧な対応」映像にネット騒然
  • 2
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を呼びかけ ライオンのエサに
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 5
    【クイズ】次のうち、「軍用機の保有数」で世界トッ…
  • 6
    経済制裁下でもロシア富豪はますます肥え太っていた…
  • 7
    バーボンの本場にウイスキー不況、トランプ関税がと…
  • 8
    イラッとすることを言われたとき、「本当に頭のいい…
  • 9
    【クイズ】1位は中国で圧倒的...世界で2番目に「超高…
  • 10
    大学院博士課程を「フリーター生産工場」にしていい…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 8
    メーガンとキャサリン、それぞれに向けていたエリザ…
  • 9
    こんなにも違った...「本物のスター・ウォーズ」をデ…
  • 10
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 10
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中