ニュース速報

ワールド

アングル:中核事業への「原点回帰」進めるコモディティ商社

2016年05月13日(金)08時55分

 5月11日、コモディティ商社が「原点回帰」を進めている。写真はビトル・グループの看板。2011年10月にジュネーブで撮影(2016年 ロイター/Denis Balibouse) 

[ロンドン 11日 ロイター] - コモディティ商社が「原点回帰」を進めている。銀行がコモディティの現物取引業務から撤退し、2010-11年に石油取引の利ザヤが急低下したため取り扱うコモディティの種類を広げてきたが、大きな成功は収められなかったためだ。

独立系の大手エネルギー商社ビトル[VITOLV.UL]は農産物市場から手を引き、ガンボー[GGL.UL]も金属市場から撤退。アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)がチョコレート・ココア事業を手放すなど、コモディティ商社は元々強みを持つ分野に続々と戻りつつある。

コモディティ取引を専門とするヒューストン大学のクレイグ・ピロング教授は「過去数年間、コモディティ商社は中核事業が順調で、特に石油取引を手掛ける商社は極めて好調だった。しかし多角化した分野では圧倒的な成功は得られなかった」と述べた。

また複数のコモディティ市場への幅広い投資は、経営管理や運転資金、リスク管理などの面で問題がある。

コモディティ商社の昨年の業績はエネルギー商社が金属や農産物を扱う商社を上回り、全体は強弱まちまちだった。しかし中核事業回帰の動きは業界全体に広がっている。

コモディティ商社はインフラ構築や新市場への進出を通じて主要市場の拡大を図ろうとしている。こうした取り組みは、倉庫や輸送手段など、サプライチェーンの中流域で資産を保有するというコモディティ商社のビジネスモデルと合致する。

穀物取引を手掛けて150年のルイ・ドレイファス[AKIRAU.UL]はロシアと中国での事業拡大を計画している。ロシアでは穀物輸出のためのインフラ投資が欠かせない。またドレイファスは合弁事業のほかに、肥料、金属、果汁、乳製品などの分野で一部資産の売却も検討している。

エネルギーと金属の分野では、ガンボーとトラフィギュラ[TRAFG.UL]が中核事業の成長を重視する方針を示している。

ガンボーのジャック・エルニ最高財務責任者(CFO)は3月、同社の投資チームは中流分野の資産に焦点を当てているが、石油・ガス以外に分野への事業多様化は模索していないと述べた。

またトラフィギュラのジェレミー・ウィアー最高経営責任者(CEO)は4月、インフラ投資を通じて石油、金属、鉱物など中核事業の取引高を増やす考えを表明した。

グレンコアも最近、農産物部門の持ち分の40%を売却し、エネルギーや金属など中核セクターを重視する方針を示している。

(Sarah McFarlane記者)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB議長、利下げに道 「慎重に進める」とも

ワールド

プーチン氏、米ロ関係修復に「トランプ氏の指導力寄与

ビジネス

フィッチ、米格付けを据え置き 政策不確実性による成

ビジネス

NY外為市場=ドル幅広く下落、FRB議長発言受けた
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子、ホッキョクグマが取った「まさかの行動」にSNS大爆笑
  • 3
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラドール2匹の深い絆
  • 4
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 5
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 8
    海上ヴィラで撮影中、スマホが夜の海に落下...女性が…
  • 9
    抽象的で理解の難しい『2001年宇宙の旅』が世に残り…
  • 10
    【クイズ】格差を示す「ジニ係数」が世界で最も高い…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 9
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中