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来年のマイナス金利解除、可能性はゼロでない=NHKインタビューで日銀総裁

2023年12月27日(水)21時19分

日銀の植田和男総裁はNHKのインタビューで、来年にマイナス金利が解除される可能性が「結論的にはゼロではない」と述べた。資料写真、19日の会見(2023年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada

[27日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁はNHKのインタビューで、来年にマイナス金利が解除される可能性が「結論的にはゼロではない」と述べた。経済・物価情勢が好転して賃金・物価の好循環が見通せる状況が来年訪れることに期待感を示した。

インタビューは26日に行われ、27日に放映された。

もっとも、植田総裁は、マイナス金利解除が来年1月なのかについては否定的な見方を示した。1月には支店長会議が開かれ、地方の中小企業の賃上げや価格転嫁の状況についてどのような報告がなされるかが焦点。

植田総裁は1月の支店長会議で賃金・物価でかなりの情報が得られる可能性は「今のところそんなに高いとは思っていない」と述べた。

植田総裁は賃金・物価の好循環の下での2%インフレの実現について「まだもうひとつ自信が持てない」と述べた。物価が2%をオーバーして際限なく上がっていくリスクは高くなく、「焦っているという気持ちはない」とし、非常に近い将来にデフレに戻るリスクは「非常に低い」と語った。

<賃金・物価の好循環、判断基準示す>

日銀が注視する賃金と物価の好循環について、植田総裁は具体的な判断基準を示した。

来年の春闘については「今年の春と同じか、それを少し上回るくらいの賃上げが決定されると望ましい」と述べた。来年3月には集中回答日があるが「特定のイベントで何か全部決まるというわけではないが、それも含めて大事なイベントはきちんと情報を確認していきたい」と語った。

政策委員の中には中小企業の賃上げまで見極める必要があるとの意見が出ているが、植田総裁は中小企業の賃金データがまだ出ていなくても「企業収益などが非常に強く、賃金が期待できるという情勢であれば1つの大きな判断材料になる」と述べた。

賃金上昇分のサービス価格への転嫁を巡っては、12月の金融政策決定会合で「企業からは引き続き難しいという声が多く聞かれる」との意見が出ていた。植田総裁は、今年上がった賃金が今年から来年にかけてどの程度サービス価格に反映されるか見たいと述べた。

日銀が来年マイナス金利を解除すれば、2007年以来17年ぶりの利上げになる。植田総裁は将来的な金融政策の転換の際には「一部現状のままで行くという部分もあるかもしれないが、それも含めて全体を見直すという作業はしたい」と話した。

(和田崇彦)

ロイター
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