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アングル:HSBCの本社移転、商業用不動産の世界的苦境を象徴

2023年07月01日(土)08時07分

 6月27日、 英金融大手HSBCが、本社をロンドン東部カナリーワーフ地区にある45階建ての超高層ビル(通称HSBCタワー=写真)から、ロンドン中心部シティーのずっと小さなオフィスビルに移転することを決めた。2015年2月撮影(2023年 ロイター/Peter Nicholls)

[ロンドン 27日 ロイター] - 英金融大手HSBCが、本社をロンドン東部カナリーワーフ地区にある45階建ての超高層ビル(通称HSBCタワー)から、ロンドン中心部シティーのずっと小さなオフィスビルに移転することを決めた。世界中で大手企業がオフィス面積を縮小する動きが進み、商業不動産市場に大打撃を与えている最近の潮流を最も象徴する事例と言えそうだ。

企業が空前のペースでオフィス面積を減らしている背景には、新型コロナウイルスのパンデミック以降に在宅勤務が定着したことや、環境問題に絡む目標達成の取り組みを進めていることがある。既に資金調達コストの急上昇に苦しんでいる不動産開発会社や賃貸物件オーナーにとっては「泣き面に蜂」の事態となっている。

不動産アナリストや専門家によると、こうした流れは大規模オフィスの賃貸事業への逆風を加速させ、都市の形態自体も変えてしまう可能性を秘める。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の調査グループディレクター、トニー・トラバース氏は「在宅勤務がHSBCの必要とするスペースを圧縮した。これは、決して同社特有の出来事にはならない」と話す。

実際、不動産サービスのナイト・フランクが今年5月公表した調査によると、世界最大手クラスの企業の約半数は向こう3年でオフィス面積を減らす計画。縮小率は10─20%というケースが多かった。

この影響は、不動産市場全体に大きく広がっている。法律事務所ウェイル・ゴットシャル・アンド・マンジェスが集計したデータに基づくと、今年第1・四半期に欧州で苦境に陥ったセクターの指数で筆頭に位置したのが不動産。バリュエーションや流動性、投資動向といった面で圧迫された。

特に家計や投資家の不動産市場向けエクスポージャーが高いスウェーデンで、問題の深刻さが浮き彫りになった。膨らんだ借入額と金利上昇、経済の不振が重なり、地元の商業不動産企業の幾つかは、投機的格付けへの格下げに直面した。

多くの企業が株主や環境団体、規制当局に迫られる形で設定した環境関連目標の達成期限が近づいていることも、オフィス面積縮小を促す大きな要因だ。

ペレナ・キャピタル・マネジメントの共同創業者ジェラルディン・デイビーズ氏は「大手企業は事業モデルを変えなければならず、できる限り環境保護の方針を追求する姿勢が必要になっている」と指摘した。

<従業員はオフィスに戻らず>

HSBCの場合、世界全体でオフィス面積を40%前後減らす目標を掲げており、これは大手企業の中でも屈指の踏み込み方だ。

2026年終盤に本社を旧BTのオフィスを再開発した「パノラマ・セントポールズ」に移す予定。総面積は55万6000平方フィートと、HSBCタワーの110万平方フィートの半分程度に過ぎない。

カナリーワーフ地区にとっては、HSBCの決定は非常にタイミングが悪い。やはり長らく同地区に拠点を置いてきたクレディ・スイスが、UBSに救済合併されたことで去就に不透明感が出ているからだ。クレディ・スイスでは今後、数千人規模の人員削減が計画されている。

同地区を運営しているカナリーワーフ・グループも手をこまねいているわけではなく、巨大な生命科学キャンパスを開発したり、より多くの集合住宅や飲食店を建設したりして、金融セクター以外にテナントを広げる努力をしている。

それでもムーディーズは5月、不動産セクターの先行きが厳しいことを理由に挙げて、カナリーワーフ・グループの格付けを引き下げた。

ブルームバーグの報道によると、カナリーワーフで最近、再開発が完了した旧トムソン・ロイター本社の「YYビル」もまだ、テナントが入っていない。

コンサルティング会社アドバンスト・ワークプレース・アソシエーツの創業者アンドルー・モーソン氏は「まさに覆水盆に返らずだ。従業員は、以前のような形でオフィスに戻ってくることはない」と言い切った。

(Iain Withers記者、Chiara Elisei記者)

ロイター
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