ニュース速報

ビジネス

エーザイのアルツハイマー薬治験で認知低下抑制効果、一部リスクも

2022年11月30日(水)13時01分

エーザイと米製薬大手バイオジェンが共同開発するアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の臨床試験で、認知機能の低下を遅らせる効果が示されたことが、29日に公表された新たなデータで明らかになった。資料写真、2018年3月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

[サンフランシスコ 29日 ロイター] - エーザイと米製薬大手バイオジェンが共同開発するアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の臨床試験で、認知機能の低下を遅らせる効果が示されたことが、29日に公表された新たなデータで明らかになった。ただ、特定の患者に危険な副作用のリスクがあることも示された。

この試験では患者の12.6%にある種の脳浮腫が見られた。この副作用は以前に類似の薬剤でも見られている。

また、14%に脳微小出血が出現した。この症状は最近行われた後続試験でレカネマブの投与を受けた2人の死亡例と関連している。5人は大出血を起こした。

両社は9月、早期アルツハイマー病患者約1800人を対象とした臨床試験で、レカネマブ投与群が偽薬(プラセボ)投与群と比較して27%の症状悪化抑制を示したと発表した。

メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)のロナルド・ピーターセン博士は「これらの抗アミロイド薬は全て脳出血増加リスクを伴う」と指摘。「当初成果、2次成果、抗アミロイド作用はかなり印象的だと思う」と述べた。

アルツハイマー協会は今回のデータについて、この治療薬が「アルツハイマー病の初期段階にある人々の経過を有意に変えられる」ことを示したと指摘。米規制当局に対し、会社側による早期承認申請を承認するよう要請した。

エーザイの株価は30日午前の東京市場で3%上昇し、バイオジェンの株価は時間外取引で0.9%上昇した。

医学誌「New England Journal of Medicine」に掲載された本試験論文の共同執筆者で、南カリフォルニア大学アルツハイマー病治療研究所所長のポール・アイセン博士は「私は(レカネマブの効果が)全面的な承認を正当化する重要なベネフィット(利益)であると信じている。しかしもちろん、われわれはより大きなベネフィットを欲している」とした上で、レカネマブは病気のより早い段階で投与されればより大きな効果が得られる可能性が高いと語った。

試験の詳細なデータは、サンフランシスコで開催されているアルツハイマー病臨床試験会議で発表された。

米食品医薬品局(FDA)は来年1月6日までに、レカネマブを「早期」審査プログラムの下で承認するかどうかを決定する予定。この決定とは関係なく、エーザイは通常のFDA承認申請を近いうちに行う方針で、欧州と日本での承認も求めるという。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と21日会談 ホワ

ワールド

マクロスコープ:日中関係悪化、広がるレアアース懸念

ワールド

アジアのハイテク株急伸、エヌビディア決算でAIバブ

ビジネス

午前のドルは157円半ば、10カ月ぶり高値 円安け
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、完成した「信じられない」大失敗ヘアにSNS爆笑
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 8
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 9
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 10
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中