ニュース速報

ビジネス

日銀、次回会合で景気判断維持へ 資金繰り支援策延長も視野

2021年06月11日(金)19時05分

和田崇彦、木原麗花

[東京 11日 ロイター] - 日銀は17―18日の金融政策決定会合で、景気の現状判断をおおむね維持し、大規模な金融緩和を継続する見通しだ。緊急事態宣言の延長で引き続き対面型サービス消費に下押し圧力が掛かる一方、輸出や生産は4月展望リポート時から若干上振れているとの見方が日銀では出ている。9月末に期限となる「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」の延長の是非も議論し、早ければ今回の会合で半年間の延長を決めるとみられる。

4月の展望リポートでは、景気の現状判断を「内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」とした。4月の決定会合後に緊急事態宣言が延長され、対面型サービスは厳しい状況が続いている。しかし、海外経済の堅調推移で輸出は好調を持続。4月の鉱工業生産指数速報は前月比2.5%上昇し、2カ月連続のプラスとなった。

日銀では年後半の景気回復に期待する声がある。ワクチン接種の進展で、これまで抑えられてきた消費が復活するとみられているほか、半導体不足の自動車生産への影響も4─6月には一巡し、7月以降は生産が進むとの見方が出ている。

一方で、足元の素材価格上昇への警戒感が高まっている。10日発表の5月の国内企業物価指数は前年比プラス4.9%と、前年比の伸び率は2008年9月以来の大きさとなった。

素材価格上昇の背後には世界経済の回復があるが、原材料価格上昇分の製品価格への転嫁は進みづらいとの見方もあり、企業収益への悪影響が懸念されている。日銀では企業物価指数の上昇の持続性や、企業の価格転嫁の動きに注目している。

日銀は今回の決定会合で、コロナ対応オペとCP・社債の積極買い入れからなる資金繰り支援特別プログラムの延長の是非を議論する見通し。コロナを巡る不確実性はなお大きく、飲食・宿泊を中心に資金繰りが厳しい企業もあるため、日銀内では延長が必要だとの声が目立つ。延長の場合は半年間が軸になる見通し。

もっとも、昨年12月に日銀が同プログラムの期限延長を決めた時とは状況が異なっている。コロナワクチンの接種が進み、先行きの景気回復への期待感が浮上していることに加え、企業の資金繰りは全体として改善している。7月1日公表の日銀短観を見極め、資金繰り情勢の変化を受けたプログラムの微修正も検討すべきとの声もあり、来月の金融政策決定会合で延長を決める可能性もある。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル貿易黒字、10月は予想上回る大幅増 主要品

ワールド

インドのサービスPMI、10月は5カ月ぶり低水準 

ビジネス

実質消費支出9月は+1.8%、5カ月連続増 自動車

ワールド

カザフスタン、アブラハム合意に参加 トランプ氏が発
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中