ニュース速報

ビジネス

アングル:中国でビットコインが再活性化、当局は「抜け道」警戒

2021年03月04日(木)15時57分

 3月1日、 暗号資産(仮想通貨)ビットコインの昨年10月以来の300%もの急騰によって、規制のあいまいな中国の仮想通貨市場が再び活気を取り戻し、規制当局が金融リスクや資本流出への警戒を高める事態になっている。写真は中国旗とビットコインのイメージ。2019年4月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

[上海 1日 ロイター] - 暗号資産(仮想通貨)ビットコインの昨年10月以来の300%もの急騰によって、規制のあいまいな中国の仮想通貨市場が再び活気を取り戻し、規制当局が金融リスクや資本流出への警戒を高める事態になっている。

中国は2017年、世界のビットコイン取引の90%を占めていた国内の仮想通貨交換業者の業務を一斉に停止させた。

中国国内の投資家は現在、海外に移転したHuobi(フォビ)、OKExなどの中国業者のプラットフォームでビットコインを取引。一時は低調だったソーシャルメディアの中国人の取引チャットルームが、ここにきて再びにぎやかになってきた。

Binance(バイナンス)に2月に口座を開いたパリス・チャン氏は「ここに来たのは投資機会を求めているからだ」と話す。同氏は相場変動の荒さや最近の急落も気にならないと口にし、「この市場は神経の太い人間向けだ」とうそぶいた。

中国人向けの交換業者は、中国本土では認可されない。しかし、個人は身分証データの詳細を入力すれば、口座開設やオンライン取引がたやすくできるのが実情だ。

バイナンスやMXCなどは人民元を使うのを禁じている。認めているのはビットコインと米ドル連動型ステーブルコイン「テザー」といった仮想通貨同士の取引のみだ。しかし中国人投資家はテザーを買うのに人民元を使う抜け道がある。投資家間での支払いを銀行カードやオンライン送金で済ませるのだ。これは中国の法規に違反しない。

一方で、規制当局筋がロイターに語ったところによると、テザーを入手するのに公式な制度に基づいて海外送金するやり方も見られる。医療目的などの合法的な買い物に偽装するのだという。この抜け穴を使えば、投資家は中国の厳格な資本規制を迂回できる。

消息筋によると、中国の証券市場監視当局は先週、傘下の地方機関に対し、仮想通貨取引の監視強化策を導入するよう指示した。しかし、海外で登録している交換業者は中国当局の管轄外だという。

DHH法律事務所(北京)のファン・メンギ弁護士によると、海外では中国当局が仮想通貨交換業者を監督できないために、当局が潜在的なリスクを見ることができなくなっている可能性がある。「中国の法律は仮想の資産価値は認めているのでビットコイン取引はやめさせられない。価値があるものは何でも交換や取引が認められるはずだからだ」。しかし、仮想通貨交換のデータや投資家情報がないために、資金洗浄を取り締まる中国の努力は難航し、資本規制の実効性も弱まっているという。

コンサルタント会社パックシールドの資金洗浄リポートによると、昨年に中国の交換業者を通じて海外に流出したデジタル資産は175億ドル相当で、前年から53%増加した。中国からの資本逃避が高まっていることの表れだとしている。

一方で、仮想通貨保管や電子財布サービスのCobo(コボ)の共同創業者、チャンハオ・ジャン氏は今年の事業の急成長を見込んでいる。同氏は「中国は今なお、仮想通貨の極めて大きな市場のままだ」と指摘し、仮想通貨をあくまで「保有しやすく、使いやすくする」のが自社の役割だと強調した。

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウォルマート、8―10月期は予想上回る 通期見通

ビジネス

米9月雇用11.9万人増で底堅さ示唆、失業率4年ぶ

ビジネス

12月FOMCで利下げ見送りとの観測高まる、9月雇

ビジネス

米国株式市場・序盤=ダウ600ドル高・ナスダック2
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 6
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中