ニュース速報

ビジネス

アングル:米短期国債利回りマイナス化の恐れ、早期解消も

2021年02月25日(木)10時11分

2月23日、 米短期国債(Tビル)利回りは、発行抑制が原因でマイナス圏まで低下する恐れが出てきた。写真はワシントンのFRB本部で2018年8月撮影(2021年 ロイター/Chris Wattie)

[23日 ロイター] - 米短期国債(Tビル)利回りは、発行抑制が原因でマイナス圏まで低下する恐れが出てきた。しかし米議会で追加経済対策法案の審議が進展している状況を目にしている市場関係者の間では、利回りがマイナス化しても一時的にとどまる可能性があるとの見方が出ている。

直近でTビル利回りがマイナスとなったのは2020年3月。当時は米国内で新型コロナウイルスの感染拡大が始まったことに起因する市場の混乱が鮮明だった。利回りのマイナス化によって各種借り入れ金利が下がり過ぎた場合、重要な資金調達市場が機能不全を起こすとともに、約5兆ドル規模のマネー・マーケット・ファンド(MMF)業界が打撃を受け、MMFが新規投資受け入れを渋るといった弊害が生じかねない。

米財務省は今月、連邦準備理事会(FRB)の政府預金口座にある現金残高を20年末時点の1兆7000億ドルから今年6月に5000億ドルまで圧縮する計画を表明。これに伴ってTビルの発行が減り、需給の引き締まりによって利回りがマイナスに沈む可能性がある。

ただこうした見通しには、追加経済対策が織り込まれていない。もしバイデン政権の下でさらに想定以上の規模の新たな経済対策法案が成立し、それが特に迅速な多額の予算執行を必要とする内容であれば、Tビル発行の圧縮と利回りのマイナス化は長続きしないかもしれない。

ウェルズ・ファーゴのマクロ・ストラテジスト、ザカリー・グリフィス氏は「例えば来月にも大規模対策が実現すれば、少なくとも当面のTビル供給を増やす必要がある。財務省はなお頼りにできる膨大な現金を保有しているとはいえ、短期的にTビルの供給を増やし続けて資金繰りの一助にすることが不可欠になる」と述べた。

23日のTビル利回りは1カ月―6カ月物まで2-5ベーシスポイント(bp)で推移した。

グリフィス氏は、Tビル利回りが相当な期間マイナスとなった場合、FRBが乗り出して銀行の超過準備に適用する付利(IOER)を引き上げなければならなくなるのではないかとみている。

FRBはこれまで、政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートを誘導目標内に収める金融調節手段としてIOERと翌日物レポファシリティーを活用してきた。これらの金利を引き上げれば、他の貸出市場からより多くの現金を吸収し、短期金利の低下圧力を和らげる効果がある。

財務省はマイナス利回りでTビルを発行できないが、市場情勢が緊迫し、安全資産需要が供給規模を圧倒してしまう局面になれば流通利回りはマイナスに転じる。

ナットウエスト・マーケッツの金利ストラテジスト、ブレーク・グウィン氏は、Tビル利回りがマイナスになってもそれが長期化しない限り、FRBが対応に動く公算は乏しいと話す。同氏がより大きなリスクとして挙げるのは、足元7bpのFFレートが5bpあたりを下回るところまで下がり、FRBの介入を呼び込む可能性が高まる事態だ。

FF市場で主な資金の出し手になっているのは、ファニーメイ(連邦住宅抵当金庫)やフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)、FHLB(連邦住宅貸付銀行)といったGSE(政府系住宅金融機関)。グウィン氏によると、彼らはFFレートが2-3bpまで低下すると、市場で資金を運用する代わりにFRBに預金する方を選び、それが市場の流動性を枯渇させて借り入れ金利の大幅な変動をもたらす傾向があるという。

もちろんIOERの引き上げは単なる金融調節上の措置で、FRBが超低金利をしばらく続けるという約束を放棄するわけではない。

またIOERを引き上げる可能性がどれぐらいあるかは、GSEの毎月の資金フロー次第という面も出てくる。GSEは各月とも住宅ローン担保証券(MBS)の元利金を一時的にレポ市場で運用した後、MBSの所有者に支払う。この元利金運用時にレポ金利が低下し、FFレートが一段と下がってもおかしくない。

翌日物レポ金利は18日に一時ゼロまで下がり、23日は5bpだった。

(Karen Brettell記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領「次はキューバ」、具体策には触れず

ワールド

ロシア、4月1日からガソリン輸出禁止措置 副首相が

ワールド

米トマホーク850発以上使用、イラン攻撃4週間 国

ワールド

アングル:米民主党、牙城カリフォルニア州の知事選で
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?...「単なるホラー作品とは違う」「あの大作も顔負け」
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    ウィリアム皇太子が軍服姿で部隊訪問...「前線任務」…
  • 6
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 7
    日本経済にとって、円高/円安はどちらが「お得」な…
  • 8
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 9
    アメリカのストーカー対策、日本との違いを考える
  • 10
    ニュースでよく聞く「東京外国為替市場」は、実際は…
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中