ニュース速報

ビジネス

アングル:コロナ禍で「余る」航空機、解体・部品業者に商機

2020年09月23日(水)16時19分

9月13日、新型コロナウイルスの世界的大流行により航空機の運航休止が広がる中、航空機の解体や中古部品の売買を手掛ける事業が持ち直しの兆しを見せている。写真は8月、カナダのミラベルにあるエアロサイクルの駐機場に置かれたエアバスA310機。エンジンが外されている(2020年 ロイター/Christinne Muschi)

[モントリオール 13日 ロイター] - 新型コロナウイルスの世界的大流行により航空機の運航休止が広がる中、航空機の解体や中古部品の売買を手掛ける事業が持ち直しの兆しを見せている。航空各社が航空機の引退を前倒ししているためだ。

企業幹部やアナリストの話では、航空機の解体や中古部品の保管、売買を行う企業は、運航休止中の航空機に商機を見い出している。その一方、年間30億ドル規模と推計される中古部品市場では、保守費用の軽減を図る航空会社からの需要にもかかわらず、供給の急増によって価格が下がる恐れがある。

新型コロナの大流行により航空産業は不振が続いているが、米商用航空機会社・GAテレシスの責任者はこのほど、航空会社5社から航空機解体のオファーを示すよう求められた。

また、カナダの同業エアロサイクルの最高経営責任者(CEO)によると、同社はこれまで航空会社の委託によって航空機をリサイクルしてきたが、現在は解体して部品を転売する目的で、運航休止中の機体を初めて買い取ろうとしている。

中古部品市場の関係者らは今、世界各地で運航休止中の航空機の行方を注視している。コンサルタント会社のオリバー・ワイマンは、航空会社がコスト削減を図る中、中古部品の需要が急増すると予想している。

中古部品は新品と競合し、保守、修理、総点検など「アフターマーケット」支出の先送りにつながる可能性がある。コンサルタント会社・NAVEOは、アフターマーケットの市場規模を500億ドルと推計している。

ある企業幹部は、あまりにも多くの航空機が解体されれば価格が落ち込むと予想し、部品購入を控えた。この幹部は「価格は急速に下がるだろう」と語った。

データ会社のシリウムによると、部品転売や廃棄のために解体される航空機は、2016年以降は年間400─500機程度で推移してきたが、2023年までに約2倍の年間1000機に増える可能性がある。

NAVEOの推計では、世界の旅客機と貨物機のうち、現在運航しているのは60%。

NAVEOは、引退するか、運航を休止したまま再開しない航空機が2019年の680機から2020年には2000機に増えると予想。ただ、同社のマネジングディレクター、リチャード・ブラウン氏はこれらの航空機について、一部の航空会社は市場環境が改善する場合に備えて様子見姿勢をとるため、全てがすぐに解体されるわけではないと話した。

実際、英国を拠点とするエアー・サルベージ・インターナショナルでは新型コロナの感染拡大以降、部品の買い手がいないため保管したままの航空機が増えている。同社は通常、年間40─50機の航空機を解体している。創設者のマーク・グレゴリー氏は、大半の航空機は最終的に解体されると予想している。

感染拡大前、同社に届けられる航空機は買い手が確定していた。エンジンなど売れ筋の部品は需要が旺盛だったからだ。

航空各社は、引退した航空機の利用可能な中古部品を買い求め、重大な保守点検が迫った比較的新しい航空機に搭載している。こうすればコストの高い修理を回避しながら運航を継続できる。

東京センチュリー<8439.T>が筆頭株主であるGAテレシスのアブドル・モーベリーCEOによると、航空各社は運航休止中の航空機の予備部品を使うことで、GAテレシスの保守点検サービスを回避している。

<航空機の早期引退>

新型コロナの大流行が、古い航空機の早期引退を後押ししている。ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)もボーイング747型機を早期引退させた。2020年の航空旅客数は55%減少する見通し。BAの747型機の一部はエアー・サルベージに引き渡される。

双通路(ワイドボディ)型航空機の国際運航に伴い、貨物輸送に使われる特定の航空機を除き、同型機の部品需要も低下している。

エアー・サルベージのグレゴリー氏は、航空機リース会社からA380型機の数機の解体について打診されたと話した。だが、NAVEOによるとA380型機のうち運航しているのはわずか5%にとどまるため、部品需要は低調だ。

航空各社は国内線を飛ぶ単通路(ナローボディ)型機の部品を求めている。単通路型機の約64%は運航しているためだ。

プライベートエクイティ(PE)会社、ベアード・キャピタルの英国パートナー、ジェームズ・ベンフィールド氏は、単通路型機であるB737とA320の解体サービスへの需要が増えると見込む。同社は8月、解体業者を買収した。

保守業者とエンジン製造業者も中古部品を取引しているが、部品が供給過剰となり販売を圧迫する恐れもある。

ゼネラル・エレクトリック(GE)のCEOは7月の電話会見で、同社は中古部品の業界動向に「参加する態勢を整えている」と語った。GEアビエーションはエンジンを製造しているが、中古部品も使っている。

<安値拾い>

航空機を安く買いたたこうとする業者もあるが、航空会社はそうした圧力をはねつけ、損失が出る価格で売ることは避けてきた。

GAテレシスのモーベリー氏は「安値の提示が多い」が、「そうした提案はまだ、受け入れられていない」と話した。

フロリダ州を拠点とするインターナショナル・エアクラフト・アソシエイツ(IAA)などの企業は、航空会社が年末までに損切りに動く可能性を見据えている。IAAのミッチ・ワインバーグ社長は「われわれのような人間は、その時こそ準備万端でいたい」と語った。

(Allison Lampert記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務長官「ブラード氏と良い話し合い」、次期FRB

ワールド

米・カタール、防衛協力強化協定とりまとめ近い ルビ

ビジネス

TikTok巡り19日の首脳会談で最終合意=米財務

ワールド

カタール空爆でイスラエル非難相次ぐ、国連人権理事会
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中