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焦点:日米中銀の危ういバランスシート、「通貨の信認」を損なう怖れ

2020年06月10日(水)15時41分

 コロナ危機によるダメージを抑え、経済の復興を図るため、日米の中央銀行がバランスシートに巨大なリスクを貯め込みながら国の政策を支援している。写真は2017年6月撮影(2020年 ロイター/Thomas White)

森佳子

[東京 10日 ロイター] - コロナ危機によるダメージを抑え、経済の復興を図るため、日米の中央銀行がバランスシートに巨大なリスクを貯め込みながら国の政策を支援している。しかし、危機終息後に、政府が本格的な財政健全化に踏み出さない限り、中銀は政府の金融子会社としての実体から抜け出せず、通貨の信認低下を招きかねない。

<不健全化する日米中銀のB/S>

FRBのバランスシート(B/S、総資産)は、コロナ危機を受けた無制限量的緩和(QE)や信用緩和により、過去最大の7.17兆ドル(6月3日時点)となった。

過去3カ月間の増加幅が3兆ドルと驚異的なペースで拡大するB/Sの負債サイドでは、民間銀行の準備預金が3.26兆ドルも積み上がり、大量のカネ余り状態となっている。

パウエル議長は5月29日、「バランスシートはもちろん恒久的に拡大することはできない」と述べたが、「現在の立ち位置と軌道に満足しており、インフレや金融の安定性に関するリスクは見られない」との認識を示した。

議長が言及した「リスク」の中にFRB自身はおそらく入っていない。

これまで世界の金融監督者は、長期化する超低金利政策の副作用で、民間金融機関が適切にリスクを管理しながら利益を上げることが困難になり、金融システムが脆弱化する可能性については大いに議論し、民間銀行に対して自己資本の拡充を促してきた。

一方で、中銀自身については、保有資産の大半が国債など安全資産で占められていたため、自己資本問題は看過されてきた。

だが、状況は大きく変わった。

日米欧の中銀は既に企業金融に手を染め、FRBは投資不適格級の社債まで購入するに至っており、保有資産が無リスクではないことは明白だ。

FRBの自己資本比率(対総資産)は、2008年に4%台だったが、現在0.54%まで低下している。

今回のコロナ危機で発動された無制限QEや信用緩和でFRBが購入するリスク資産の大半には、財務省による信用補完が付与され、一定の配慮はなされている。しかし、大統領選を控えた米国が景気テコ入れを狙って追加的財政刺激策を講じれば、事実上、財政ファイナンスをしているFRBの自己資本比率は限りなくゼロに近付いていくだろう。

日銀の自己資本比率については、会計規定18条で「引当金を含む自己資金の日銀券発行残高に対する比率が10%程度に維持されるよう調整するもの」とされ、「自己資金(純資産)の総資産に対する比率」として定義される通常の自己資本比率とは異なる。

正常な金融政策の下では、日銀券発行残高と日銀の総資産は似たような値となるため、両者の区別は必ずしも重要ではないが、異次元緩和によって保有資産が膨らむ中で、日銀定義による自己資本比率は財務の健全性の指標としての意味をなしていない。

日銀のB/Sは5月31日時点で638.59兆円で、自己資本は引当金を含めても9兆円強しかない。

<政府の金融子会社>

中銀がB/Sに巨大なリスク抱え込む傍らで、恩恵を受けてきたのが政府だ。

「日銀の異次元緩和という金融抑圧がなかりせば、わが国の長期金利は果たして何% になっていたのかは定かではないが、仮に2016年度初めに財務省が示した『仮定計算』を起点として考えれば、2020年度のわが国は約6兆円の利払費を節減できていることになる」と日本総研調査部・主席研究員の河村小百合氏は言う。

今後、日銀が金利の引き上げ誘導局面に入って債務超過に転落し、政府がその分の損失補填を余儀なくされることになれば、異次元緩和によって利払費を抑制できた分のツケが後年に回ってきたとみることもできる。そうなれば、政府、ひいては国民の側が、これまで抑制できた利払費の金額を上回る負担を強いられる可能性も否定できないと同氏はみている。

米国も同じような状況だ。

米議会予算局(CBO)は2020年度の連邦政府の財政赤字が3.7兆ドルと過去最悪の水準に膨れ上がると試算する。

この赤字をファイナンスするため、巨額の米国債が市中発行されているが、こうした国債の大半をFRBが金融機関からオペで購入しているため、長期金利の上昇は抑制され、財政規律は弛緩している。

<通貨の信認>

「通貨の信認は発行主体の健全性および信用力に対する評価を源として醸成されるものだ」と河村氏は言う。

主要中銀が非伝統的な手段による金融政策運営を展開して久しい今日においては、とりわけ、当該通貨を発行する政府による健全な財政運営が行われているかという点に加え、中央銀行による通貨価値安定のための金融政策運営能力が十分に維持されているか、という点が重要になるという。

日本が円の信認を維持するには、構造改革を断行することを大前提に「実効性のある財政再建に努め、危機が峠を越えたところで日銀の資産買い入れを停止し、以後は資産規模の縮小に慎重に着手することが必要」と河村氏は指摘する。さらに「万が一の事態に備え、日銀への資本注入の枠組みの検討に着手することが求められる」という。

(編集:石田仁志)

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