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展望2018:年後半に円高予想、日銀の政策修正にらむ 「トランプリスク」も

2017年12月24日(日)17時13分

 12月22日、2018年の外為市場では、年後半にドル安/円高が進むとの見方が多い。日米景気が堅調なだけに、物価がある程度上昇すれば、日銀は長期金利目標の引き上げなど政策修正に動くとみられている。写真は都内で1月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 22日 ロイター] - 2018年の外為市場では、年後半にドル安/円高が進むとの見方が多い。日米景気が堅調なだけに、物価がある程度上昇すれば、日銀は長期金利目標の引き上げなど政策修正に動くとみられている。米国に景気減速懸念が浮上した場合も、トランプ米大統領が円安けん制に走る可能性があるという。

市場参加者の見方は以下の通り。

●米中間選挙、定番のドル安政策発動か

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

来年のポイントは、米中間選挙で勝利するためにトランプ大統領が為替政策を発動するか否かにかかっている。現に今年11月のアジア歴訪以降、アジア通貨高/ドル安となっていることは、その「はしり」だろう。

日本に対しては、米国製の防衛装備品を購入させることで貿易赤字を縮小させることを進めているが、為替政策ではドル安/円高を飲ませることと抱き合わせになるのではないか。

米軍需産業だけでなく、コアなトランプ支持層である米製造業の人々に、メード・イン・アメリカのモノを売り込む前提であるドル安を提供することは、トランプ氏の公約と整合的である。対米貿易黒字で二番手の日本だけでなく、最大の対米黒字国である中国や三番手のドイツに対しても、通貨高を許容させたいはずだ。

しかし、中国はバブルのガス抜きのショツク・アブソーバーとして人民元安を確保しておきたいはずだし、ドイツにとっては、英国の欧州連合(EU)離脱問題に伴う悪影響を和らげるため、一定の欧州通貨安が都合が良い。結果的に、米国が為替問題で最も組みしやすいのは日本になる。

一方、日本では量的・質的金融緩和からの出口戦略を描き始めていることが、日銀サイドの発言から見て取れる。

以上から、2018年のドル/円のレンジは95円から115円を予想する。

●年後半にグローバル経済が減速、ドル安/円高に

<SMBC日興証券 為替外債ストラテジスト 野地慎氏>

好調なグローバル経済を背景に、米長期金利が春先に2.6%台に乗せる局面があるかもしれない。その場合は、米長期金利に連動するドル/円も115円をうかがうことになるだろう。

しかし、中国の財政出動と新興国の景気拡大による今年の好循環が、来年も続くとは考えにくい。中国は規制強化に傾斜し、ソフトランディングを目指している。秋口からはグローバル経済も次第に減速し、米国も2回目の利上げができるかどうかという状況になりそうだ。

そうなれば、米長期金利は2.2―2.3%台に反落し、ドル/円も110円またはそれを下回る展開が予想される。

米国の政策金利の長期見通しは目下、2.75%まで低下している。賃金が3%上昇し、インフレが加速して定着するのであれば、必然的に上方修正されるだろう。

だが、依然として労働市場にスラックがあるとみられ、賃金が上がりにくい構造になっている。さらに、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長のパウエル氏はバランスを重視する人物だ。経済の熱量が上がらない状況で利上げを推し進めれば、どのような結果を招くか認識しているはずだ。

●世界景気に上振れリスク、年4回の米利上げも

<野村証券 チーフ為替ストラテジスト 池田雄之輔氏>

来年も、ドル/円を左右する最大の要因は、米国の利上げ(期待)だろう。先物市場では18年末までに通算7回目までの利上げが織り込まれた。ドル/円の理論値はすでに120円なのだが、11月の日本株の乱高下以降、ヘッジファンドが為替トレードから手を引いてしまい、ドル高が出遅れている。

しかし、この現象はあくまで年末の一時的な現象である可能性が高い。新年に入れば、ヘッジファンド勢の戦線復帰とともに米金利上昇にキャッチアップするべく、ドル/円も上昇基調が鮮明になろう。3月ないし6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)前後に1ドル=120円に達し、そのレベルを年末まで維持できると予想する。年間の想定レンジは111円―124円。

世界景気には設備投資を中心に上振れリスクがあり、米国も年間4回の利上げが必要になる可能性がある。

しかし、そのような強気のシナリオでは、日銀も金融政策正常化の意欲を見せるだろう。円安の進行でトランプ政権を刺激する前に、120円前後で安定させる方が得策、との政治判断が政府サイドで働くかもしれない。

結果的に、日銀が「コールオプションの売り」のような機能を持つ結果、130円といった大幅の円安は期待できない。

円高リスクがあるとすれば、中国景気の急減速と米国株価の急落が要注意だろう。いずれかがきっかけとなって米国景気見通しが悪化すれば、利上げ期待も後退し、ドル安シナリオに転落する。

●2014年半ば以降のドル独歩高の修正局面が続く

<三菱東京UFJ銀行 チーフアナリスト 内田稔氏>

日米金融政策の相違からドル高/円安が意識されやすいが、市場はすでに、短期的な米経済の好調や緩やかなペースでの利上げを織り込んでいる。一段のドル高には、長期的な米経済の加速や低インフレからの脱却期待が必要だ。来年も米長期金利の大幅上昇は見込みにくいため、ドルの上値は重いだろう。

緩やかなペースではあるが、ユーロ圏や英国、カナダなどが金融政策の正常化を進めていることで、金融政策に起因する相対的なドルの優位性は失われつつある。14年半ば以降のドル独歩高の修整圧力が引き続き、ドルを下押しすると予想している。

日銀の金融緩和は長期化が見込まれるが、慎重に市場との対話を重ねながら、長期金利の小幅な上昇を容認する姿勢へ転じる可能性がある。その場合、たとえ上昇幅はわずかでも、市場は金融政策変化の兆しに強い反応を示し、円高圧力が強まりやすい。最近の経常黒字幅の拡大なども合わせ考えると、来年は円高圧力がいくらか高まりそうだとみている。

もっとも、よほど世界的な景気減速見通しでも台頭しない限り、ドル安/円高が進む局面では本邦勢による旺盛な対外直接投資や証券投資需要がドル/円を下支えする。来年のドル/円は115円付近を上限として徐々に上値を切り下げるだろうが、安値も最大で105円程度とみている。

●ドル120円超える円安、新興国はトルコ・メキシコに注意

<外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長 神田卓也氏>

日米の金融政策のコントラストは健在で、ドル高/円安が基本路線。日米中銀の主要人事が固まり、米税制改革の効果が出てくれば、年後半にかけてドルは123円付近まで上昇する可能性がある。一方、米国政治への不信感や北朝鮮を含めた地政学リスクは来年もくすぶる。これらのリスクが注目されれば一時的に110円を割り込む場面があるかもしれない。

新興国通貨は、米国の利上げ局面で売り圧力がかかりやすいのが過去の通例だった。弱みを持っている新興国通貨に売りが集中する可能性がある。注意が必要なのは、高金利で個人投資家にも人気のトルコリラとメキシコペソ。売り圧力がかかった時、下方向への値幅が大きくなりそうだ。

トルコはエルドアン大統領が中銀の独立性を毀損(きそん)。米国や欧州連合(EU)との関係悪化や中東情勢に絡んだ地政学リスクが警戒される。メキシコは北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の難航が予想され、大統領選挙ではポピュリズム政党党首のオブラドール氏が最有力候補と言われている。仮に同氏が当選した場合は、トランプ米大統領との対立先鋭化への懸念が出てきそうだ。

●米税制改革の消費拡大効果は限定的、日銀の金融政策修正リスクも

<大和証券 チーフ為替アナリスト 亀岡裕次氏>

2018年は、これまで米国の景気拡大期待で進んできた株高が鈍化する可能性がある。また、米税制改革は企業や富裕層に対してメリットが大きいが、中間層への経済効果、消費拡大効果は大きくないとみている。

結果的に消費の拡大がけん引する景気拡大は期待倒れに終わる可能性があり、ドル/円は年央にかけて105円程度まで下落する余地があると考える。

さらに景気拡大が思ったように進まないのであれば、トランプ政権によるドル高けん制リスクも浮上してくる。

また、日銀の金融政策については、量的緩和(国債買い入れ)のペースの鈍化のみならず、米国株の上昇が続き、リスクオンの環境が続くのであれば、国内金融機関の収益への配慮から利回り曲線をスティープ化させる可能性も否定できない。いずれにせよ、市場参加者からは円高要因としてとらえられる可能性がある。

2018年のドル/円の基本レンジは105―115円を予想する。

●ドル100円方向へ、米国債のイールドカーブフラット化進む

<みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>

今年は米連邦準備理事会(FRB)が3度の利上げを実施したものの、長期金利はそれほど上昇しなかった。根底にリセッション(景気後退)が近いとの見方があるからだろう。来年も米国債のイールドカーブ(利回り曲線)はフラット化が続き、逆イールドも視野に入る中、ドル売りが続くと思われる。

今年、ドル全面安が進んだにもかかわらず、さほど円高が進まなかった背景には、ユーロとメキシコペソという大きく買われた通貨がほかにあったからだが、来年もこの2通貨がこのまま上昇を続けるのは難しいだろう。

一方、円は、米財務省も指摘するように、実質実効為替レートからみて長期平均から2割安く、現段階で過小評価。基礎的需給をみても円買いに傾く傾向が強まりそうだ。ドルは来年1─3月期に114円程度まで上昇するかもしれないが、年末にかけては100円の方向に向かうとみている。

欧州中央銀行(ECB)が利上げに至るのは2019年以降が有力ということを考えると、来年はユーロも買いにくいだろう。ドル、ユーロともに買い材料に欠けるが、ドルの弱さの方が目立つと思われ、ユーロ/ドルは1.15─1.20ドルを主戦場に堅調に推移するとみている。

ただし、イタリア総選挙、ブレグジット(英国のEU離脱)交渉の2つは波乱材料になる可能性があり、注意が必要だ。特にブレグジット交渉の実質的な期限は18年秋。ここまでに暫定合意が果たされなければ、なし崩しの離脱が意識され、ポンドが急落するだろう。これは基本的にユーロ相場の支えになると考えるが、リスク回避的なドル買いを強め、ユーロ/ドルの押し下げにつながる可能性も否定はできない。

●年後半は日銀が正常化に踏み出す、ドル/円はに反落へ

<バンクオブアメリカ・メリルリンチ チーフ日本FX株式ストラテジスト 山田修輔氏>

堅調な経済成長とインフレの再加速を背景に、米国では10年債利回りが3月末までに2.9%に上昇する。つれてドルは6月末までに122円付近まで買われると予想している。

しかし、その後は年末までに115円付近へ反落するだろう。日銀が10年金利の誘導目標レンジ上限を来年7─9月期に0─0.25%へ、19年4─6月期には0─0.5%へ引き上げ、金融政策正常化の第一歩を踏み出すと見込んでいるためだ。

日銀が金利目標の引き上げを7─9月期に行うのは、春闘を受けた賃金改定や夏のボーナス動向が判明し、昨年来の円安が国内物価に十分波及したと考えられるようになるため。政治的にも9月の自民党総裁選前後に、政府がデフレ脱却を宣言する可能性がある。

予想通り米金利が上昇すれば、国内の機関投資家はオープン外債投資により積極的となるだろう。昨年はドルが100円近辺へ下落する過程で国内の需給バランスが悪化、ドル/円は東京市場の取引時間帯に一貫して軟調だった。

しかし、今年はその時間帯に底堅さを見せている。高利回り資産に対する旺盛な国内需要を反映したものと言える。

来年はボラティリティが高まる可能性もある。過熱気味な世界の株式市場動向も考慮して、レンジは105─127円程度と想定している。

*カテゴリーを追加します。

(為替マーケットチーム 編集:伊賀大記)

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