ニュース速報

ビジネス

ギリシャ、デフォルト後に何が起こるか

2015年06月18日(木)15時02分

 6月17日、ギリシャ政府はIMFから受けた16億ユーロの融資を月末までに返済する必要があるが、国際債権団から新たな融資を獲得できない場合、デフォルト(債務不履行)になる可能性が高い。アテネで17日撮影(2015年 ロイター/Yannis Behrakis)

[ブリュッセル 17日 ロイター] - ギリシャ政府は6月30日、国際通貨基金(IMF)から受けた16億ユーロの融資を返済する必要があるが、国際債権団から新たな融資を獲得できない場合、デフォルト(債務不履行)になる可能性が高い。

そうなればユーロ圏離脱も現実味が増す。以下、IMFへの返済ができなければ、どのような展開が予想されるのか、シミュレーションしてみた。

<1.即座にデフォルト認定、資本規制>

関係筋によると、IMFは返済に猶予期間を与えていないため、期限までに返済できなければ、即座にデフォルトと見なされるという。

デフォルトと認定されれば、ギリシャやユーロ圏全体の金融市場が動揺、ギリシャの銀行から預金流出が加速する。資本流出に歯止めをかけるため、ギリシャは資本規制の導入を余儀なくされるかもしれない。

<2.ECBが緊急流動性支援を制限・凍結>

次の問題は、欧州中央銀行(ECB)がデフォルト後もどの程度の期間、ギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)を承認し続けるのかという点だ。ELAの一部はギリシャ国債が担保になっている。

ECBは毎週会合を開き、ELA枠について協議している。枠はこれまで段階的に引き上げられ、現在は約841億ユーロになっている。

ギリシャがデフォルトになればELAを凍結、もしくは枠を縮小する可能性がある。もしくは、ギリシャの銀行が差し入れる担保に適用する「ヘアカット(担保価値の削減率)」を引き上げるかもしれない。

<3.ECB保有のギリシャ国債がデフォルト>

7─8月はECBが保有する68億ユーロのギリシャ国債が満期を迎える。ギリシャがIMFへの返済を見送った後も、ECBがギリシャ銀への限定支援を続けていたとしても、ECB保有のギリシャ国債がデフォルトになれば、資金供給停止への政治圧力が高まるのは必至だ。

<4.EU予算執行差し止め>

そうなれば、ユーロ圏の債権国の一部からは、EU予算からのギリシャへの支払いを差し止めるよう求める声が強まる可能性がある。ギリシャには国際援助機関からの人道支援が必要になるかもしれない。

<5.公務員給与や年金の支給遅延、IOUで支払い>

ギリシャがデフォルト後もどのくらいの期間、公務員給与や年金、業者への支払いを続けられるのかは不明。ギリシャ財政はプライマリーバランス(基礎的財政収支)がおおむね均衡しており、政府は公的機関に対し、余裕資金があれば中銀に引き渡すよう指示している。

多くの業者は、ギリシャ政府からはここ数カ月、支払いがなされていないとしている。政府はその一部、もしくはすべてをIOU(借用証書)で支払うことになるかもしれない。事実上の二重通貨制だ。

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

逮捕475人で大半が韓国籍、米で建設中の現代自工場

ワールド

FRB議長候補、ハセット・ウォーシュ・ウォーラーの

ワールド

アングル:雇用激減するメキシコ国境の町、トランプ関

ビジネス

米国株式市場=小幅安、景気先行き懸念が重し 利下げ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 5
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 6
    ロシア航空戦力の脆弱性が浮き彫りに...ウクライナ軍…
  • 7
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 8
    金価格が過去最高を更新、「異例の急騰」招いた要因…
  • 9
    ハイカーグループに向かってクマ猛ダッシュ、砂塵舞…
  • 10
    今なぜ「腹斜筋」なのか?...ブルース・リーのような…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習慣とは?
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 7
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 8
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨッ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中