ニュース速報

ビジネス

物価2%達成時期、不確実性高まっている=白井日銀委員

2015年03月11日(水)11時49分

 3月11日、日銀が公表した講演録によると、白井さゆり審議委員は、物価上昇率が目標とする2%に達する時期について「直近の見通しから後ずれする可能性を含め、不確実性が高まっている」と指摘した。都内で昨年1月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 11日 ロイター] - 白井さゆり審議委員は、物価が目標とする2%に達する時期について「直近の見通しから後ずれする可能性含め、不確実性が高まっている」との認識を示した。理由として海外発のディスインフレの波及や、企業が販売価格を引き上げないリスク、家計の予想インフレ率がガソリン動向などで不安定化する可能性を指摘した。

今月4日から10日かけての欧州中央銀(ECB)や英中銀などでの講演内容を日銀がホームページで公表した。

白井委員は、物価見通しのリスクについて、原油安によるエネルギー価格の低下と世界的なディスインフレ傾向、一部企業の販売価格抑制によるシェア拡大志向、インフレ期待上昇が後ずれする可能性を指摘。個人的な見解として、物価上昇率の一時的な低下は、「物価の基調や国内需要の回復ペースが持続している限り、容認しうる」としながらも、物価が2%に近づくタイミングは「直近の見通しから後ずれする可能性を含め、不確実性が高まっている」との見解を示した。

物価の基調をみる上では、指標としている生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)に加え「(極端な物価の動きを示す品目を取り除いた)10%刈込平均値、ラスパイレス連鎖指数、上昇品目と下落品目の数の比率なども重視」し、「企業物価指数や企業向けサービス価格、商品価格も注視している」とした。

デフレが長期に続いた日本では、人々の物価観を示す期待インフレ率が「そもそもアンカーされておらず、しかも1%前後で変動してきた」と指摘。「期待インフレ率を2%程度に高めていくことができるかが重視されている」とした。

そのうえで、日銀短観において調査している企業の物価見通しをもとに「企業の中長期の予想物価上昇率はまだ安定しておらず、2%程度上昇していくには道半ば」と分析。一方、日銀が公表している「生活意識に関するアンケート調査」から、家計の予想物価上昇率は「1年後も5年後も物価が常に上昇すると予想している」とする一方、多くの家計が物価上昇を「好ましくない」と考えおり、家計が物価上昇を容認するには現在の雇用・所得環境の改善だけではなく、「将来の収入期待が高まることが不可欠」と強調した。

日銀は目標とする物価2%の到達を「2015年度を中心とする期間」と見込んでいるが、2015年度の物価見通しは、1月の「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の中間評価において、それまでの1.9%から1.0%に下方修正された。

この点に関して白井委員は「物価の基調的な動きがおおむね不変との見方が維持されている」とし、要因に原油価格の下落はやや長い目でみて需給ギャップの改善を通じた物価の押し上げ要因に作用することや、インフレ期待が総じて横ばいで維持されていること、賃上げの動きなどを挙げた。

このため、「物価上昇率は当初の想定よりも力強いペースで上昇して2015年度末にかけて2%程度に近づけると見込んでいる」と語った。

*内容を追加します。

(竹本能文 伊藤純夫 編集:山川薫)

ロイター
Copyright (C) 2015 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国輸出、5月は前年比+7.6% 予想上回る伸び

ビジネス

中国EVのNIO、第2四半期販売台数は倍増超見込む

ビジネス

カナダ中銀、緩和サイクルは慎重さ不可欠 インフレの

ビジネス

MUFGと三井住友FG、トヨタ株売却へ 1兆300
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 2

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 3

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らかに ヒト以外で確認されたのは初めて

  • 4

    「出生率0.72」韓国の人口政策に(まだ)勝算あり

  • 5

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 6

    なぜ「管理職は罰ゲーム」と言われるようになったの…

  • 7

    アメリカ兵器でのロシア領内攻撃容認、プーチンの「…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    世界大学ランキング、日本勢は「東大・京大」含む63…

  • 10

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 3

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 5

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 6

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 7

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 8

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 9

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中