ニュース速報

アングル:メイ英首相の更迭は可能か

2019年04月12日(金)14時40分

[ロンドン 11日 ロイター] - 英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、メイ英首相に辞任を求める圧力が強まっている。メイ氏は離脱を見届けた後に辞任する意向を示しているが、与党保守党がそれより前に同氏を更迭することはできるのだろうか。

考えられる更迭手続きをまとめた。

●党首信任投票

保守党は昨年12月、メイ氏に対する党首としての信任投票を行ったが信任され、罷免に至らなかった。規定により、党首信任投票は1年間は再実施できない。

●内閣不信任案

議会は、メイ内閣への不信任決議案の投票を行うことができ、賛成多数となればメイ氏は辞任に追い込まれる可能性がある。

不信任となった場合でも、14日以内に再び信任投票を行って信任を得れば、メイ氏は政権を維持することができる。この間、野党労働党も政権樹立を試みることが可能。

14日以内に議会で過半数を制する政権が樹立できない場合、総選挙が実施される。

今年1月、メイ氏は労働党が求めた不信任決議案の投票で信任を勝ち取った。しかし労働党はいつでも不信任投票の再実施を要請することができる。

不信任決議を通すには、与党議員数人もしくは北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)の議員らが不信任に賛成するか、棄権する必要がある。

離脱派の与党議員数人は、造反も辞さない姿勢を示しているが、実際に投票となった時に造反するかどうかは不明。

内閣不信任案が可決されても、メイ氏が保守党党首を辞任する義務はないが、政治的に見て党首を続けることは考えにくい。

●保守党内での辞任圧力

総選挙のリスクを冒さずにメイ首相を辞めさせる正式な手段が無いため、保守党議員らは辞任圧力をかける代替的な手法を探している。

メイ氏は先に、EU離脱を6月30日から再延期することはないと述べていたが、このほどEUと10月末までの再延長で合意した。

既にこの点が辞任要求の根拠として使われている。

一部議員は党首選を司る党内委員会に対し、メイ氏不信任の書簡をまとめて同氏に渡すことで、同氏が党内の支持を失ったことを示すよう要請している。

デーリー・テレグラフ紙の報道によると、党首信任投票の1年以内の再実施を禁止する規定を変更することも検討されている。草の根の党員1万人の署名があれば、規定変更手続きに入れる可能性があるという。

不満を抱く党員は5月初めの地方選結果にも注目している。英国が同月の欧州議会選に参加する場合には、その結果も注目材料。これらの選挙で保守党が惨敗するようなら、党首交代を求める根拠に使われるだろう。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱重の今期、事業利益9.6%増予想 市場予想下回

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊鋼への生産集約を本格検討 大阪の

ワールド

トランプ米大統領、8日にイスラエル戦略相と会談=ア

ビジネス

NTT、発行済み株式の1.81%・2000億円を上
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 10
    日本の「治安神話」崩壊...犯罪増加と「生き甲斐」ブ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中