新聞配達中、突然クマに襲われた女性

 「鈴を持たずに配達していたら、いきなり後ろから襲われました。まずお尻をひっかかれて倒されました。さらに右の腰をひっかかれ、左肩を噛まれ、最後に、頭に爪が来たんです」。

 新聞配達中に襲われた女性の夫(70代)は、妻の被害状況をそう振り返った。

 襲撃はこの年の9月29日の午前4時10分ごろだった。いつも配達は午前3時半ごろ始まり、約30分で40世帯ほどに配る。周囲は真っ暗で人影もない。妻は「最近は目撃情報が多いから注意しないと」とは思っていたものの、この日、クマの存在にはまったく気づかなかった。

 襲われて出血し、噛まれた傷は最大で深さ2センチに達した。全治約1ヵ月の重傷だった。(92〜93ページより)

「鈴を持てばいいのに」と思われるかもしれないが、この地域には高齢者も多く、鈴やラジオの音で目を覚ましてしまう人も少なくないのだという。配達者には「読者の家の人を起こしてしまっていいのか」という葛藤もあるだけに、そうそう簡単なことではないわけだ。

また、「車で配達すればなんとかなるのではないか」といえば、それほど甘い話でもない。たとえば、ある年の9月中旬の午前3時ごろ、秋田県内で新聞配達中にクマに襲われ、頭などを負傷した別の男性の話からもそれは明らかだ。

真っ暗な住宅地を車で配達中、降車して配達先へ歩いていたところ、正面からいきなり大きな物がぶつかってきて体に覆いかぶさったというのだ。当初は「暴漢や通り魔に突然襲われた」と思ったというが、それも無理のない話。むしろ、そのほうが現実味があるかもしれない。だが体毛を感じ、医師の指摘もあって、あとからクマだとわかったのだという。

 「1分ほどの間にものすごい速さで何度もひっかいてきました。あと10センチずれていたら目や鼻をやられていました。立ち去った後には『あと一撃でどうなったかわからない。命拾いした』と思った。車へ戻ってから一気に傷口から血があふれてきました」。(94ページより)

秋田県の担当者によれば、クマの活動が特に活発になるのは朝の4〜8時ごろ。早朝の新聞配達はちょうどこの時間帯と重なる。住宅街は見通しが悪く、物陰に潜むクマが新聞を配達する人と鉢合わせになる可能性もある。

同担当者は「音や照明は、クマに人の存在を気づかせるきっかけになるため、配達する際には音を鳴らし、照明を持ち、ポストの近くまで乗り物で乗りつけることなどを意識してほしい」と話すが、ここでも「寝ている人を起こせない」という問題が絡みついてくる。

そればかりか、車を家に横づけした直後にクマが現れ、人を怖がるどころか車の周囲をぐるぐる回ったという話もあるのだから恐ろしい。

その関係者は「おそらくクマは車に興味を示したのでしょう」と話しているが、そうなるともう安全な手段はないようなものだ。

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