シルバーウィーク直前に夏休みをとり、軽井沢へ行ってきた。楽しい時間を過ごせたが、ひとつ気になったのがクマの出没情報だった。
近くの信濃追分に現れたという話は事前に聞いていたため、同地にある古書店に顔を出した際にも少しばかり緊張したが(熊鈴をつけて犬の散歩をする人も見かけたし)、それ以上に驚かされたのは北軽井沢での出没情報を知らされたときだった。
軽井沢は、地域を「人間活動エリア・緩衝エリア・クマ生息エリア」に分けるゾーニング管理を徹底し、生活圏での被害を抑え込んでいることで知られる。だからこそ――軽井沢町のクマ対策を非難したいのではなく――どれだけ気をつけても、クマが出没する可能性はあるのだと実感せざるを得なかったのだ。
そんなことがあった直後に読んだので、『ルポ クマ襲撃: 被害最多県 秋田の現場から』(工藤 哲 著、平凡社新書)にも大いに考えさせられるものがあった。しかもタイトルにもあるように、舞台である秋田はクマ襲撃被害最多の県として知られる。
筆者はクマの生態を専門にする研究者というよりは一取材者だ。秋田で過ごすうちに、クマの人身被害の続発や社会的な影響の大きさから、数年がかりの取材を続けることになった。また関係者の話をより深く理解したいと思い、狩猟免許取得の勉強もし、試験を受けた。
何人もの被害者に会い、襲われた時の状況や思いを聞くにつれて、「こうした心身の傷を、さまざまなつらい経験を無駄にしてはいけない。起きたことを記録し、この先の教訓にしなくてはいけない」と思うようになった。(はじめに――クマが街を歩き回る日常)
クマは走るのが速く、木にも素早く登ることができ、ダム湖や海、川も泳げるなど高い身体能力を持っている。それだけでも恐ろしいが、とはいえ本来は人と会わないように生活している。
つまり、これまでと同じく山奥にとどまり、木の実を中心に食べているだけなら問題はないのだ。
ところが近年は、山の木の実の不作や人里の環境変化など、さまざまな要因が重なり、クマは人里や市街地に現れやすくなったのである。本書でも実際の被害状況が克明に紹介されているが、たとえば以下は、2023年秋に著者が取材した、秋田市内で朝早く新聞配達をしていてクマに襲われた女性に関する記述だ。
