ベトナム戦争での敗北の影響は必ずしも大きくなかった

負けた実感が薄いことには、アメリカ人の犠牲の少なさも関係している。もちろん戦争は多くの人命を奪う。民間人も含め、イラン側では何千人もの死者が出た。しかしアメリカ側の死者は、6月半ばの時点で20人に満たなかった。

かつてのベトナム戦争ではどうだったか。10年以上にわたる激しい戦闘で数百万の命が奪われた。その大半は民間人だった。そしてアメリカ人兵士も、6万人弱が犠牲になった。

1975年4月29日、陥落寸前の南ベトナムの首都サイゴンから脱出するため米軍のヘリに乗り込む人々
1975年4月29日、陥落寸前の南ベトナムの首都サイゴンから脱出するため米軍のヘリに乗り込む人々 UPI/AFLO

つらい出来事だった。だから当時を知るアメリカ人にとって、「ベトナム」という言葉は東南アジアに実在する国の名称ではなく、あの苦い経験のメタファー(暗喩)ないしシンボルとなった。

死傷した米兵の遺族・親族だけではない。大国の自信過剰に対する戒めと受け止める政治家もいれば、正しい戦略的計算を妨げた過誤の一例と見なす人もいた。しかし国民の多くが、あれを消し難い汚点と見なしているのは事実。2014年時点の世論調査でも、回答者の58%はベトナム戦争を「暗い時期」と記憶していた。対して「誇りに思う」という回答は12%にすぎなかった。

それでもアメリカの長期的な国家戦略という点からすれば、ベトナム戦争での敗北の影響は必ずしも大きくなかった。高くついたのは事実だが、その後にアメリカは東西冷戦で最終的な勝利を収めている。かつて敵だったベトナムも、今は東南アジアの親米大国だ。

ベトナム戦争とは異なる点は?
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