<アメリカと違い、イギリスの首相配偶者は公人とはみなされず、素性を知られることすらないのが通常だが>
アメリカとイギリスの間で、小さいようでいて重要な違いは、イギリスには「ファーストレディー」という概念がないことだ。
首相夫人はいるが、一般に公人とは見なされないし、ましてや政府運営のパートナーのような存在とは考えられていない。
これはアメリカ人には腑に落ちないらしい――だって夫婦はチームじゃないか!
時にはヒラリー・クリントンのように、ファーストレディー自身が大物政治家であり、ファーストレディーの立場を自分自身の政治キャリアの足掛かりに利用する場合もある。
夫婦に権力が集中すると
イギリス人の僕としては、首相の配偶者(イギリスの場合、ここには歴代3人の男性も含まれる)がもしも強い政治的見解を持ち、選挙で選ばれていない立場で何らかの影響力を行使しているとしたら、違和感を覚えるだろう。
イギリスにも「パワーカップル」の前例はある。ニコラ・スタージョンはスコットランド自治政府首相で、夫のピーター・マレルはスコットランド民族党(SNP)の最高責任者だった。1つの家庭に権力が集中していることを人々は懸念したが、心配の必要はないと言い聞かせられていた。党の資金をめぐって疑問を呈する人々もいたが、SNP指導部は取り合わなかった。
そして今年、マレルは党資金から多額の金を横領した罪で有罪判決を受け、収監された。スタージョンは起訴されなかったが、自分は完全に無実であり、しかもこの事件に驚愕し、ゾッとしているという彼女の主張には、いささか虫がよすぎるとの見方もある。