第2次大戦後、「パックス・アメリカーナ」と呼ばれた盟主アメリカに支えられた平和は、アメリカは物質的・道義的に比類なき存在であり、世界の安全や繁栄に特別な責務を負うという「例外主義」的な意識に裏付けられていた。
しかし、ドナルド・トランプはこの意識を完全に振り切った。2017年に大統領に就任したトランプの就任演説を貫いたのは「世界に搾取され、弱くなったアメリカ」というネガティブな自国像であった。
中間層が痩せ細り、多くの人々が貧困層に転落しているアメリカの現状を「大惨事」と言い表す悲観的なトーンは、力強いアメリカと、その前に開かれた明るい未来をうたってきた歴代政権の就任演説と一線を画していた。
トランプが「大惨事」の根本原因として糾弾したのが、アメリカの、トランプの目から見ればあまりに「利他的」な世界関与であった。
トランプは、世界の平和のために米軍を犠牲にし、世界の繁栄のためにアメリカの産業や富を犠牲にしてきたと歴代政権を痛烈に批判し、今後アメリカは、ただひたすら国益を追求し、「アメリカ第一」でいかねばならないと宣言した。
24年の大統領選で勝利し、大統領の座に返り咲いたトランプは、さらに劇的に「アメリカ第一」を進めている。25年12月、第2次トランプ政権が発表した「2025年版国家安全保障戦略(NSS)」は、「アメリカが巨人アトラスのように世界秩序を支えてきた時代は終焉した」と明言した。
このように国際秩序の盟主の役割を放棄したアメリカは、国際秩序の破壊者としての振る舞いすら見せている。