Maki Shiraki Tim Kelly Yoshifumi Takemoto

[東京 25日 ロイター] - 米新興防衛企業アンドゥリル・インダストリーズが、日産自動車の追浜工場(神奈川県横須賀市)の取得に向け協議していることが分かった。日産が閉鎖する同工場を軍事用ドローン(無人機)の生産拠点に転換したい考えだ。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。アンドゥリルによる取得が実現すれば、戦後の日本の経済成長をけん引してきた自動車工場が防衛装備の工場に生まれ変わることになり、平和国家を掲げてきた日本にとって象徴的な変化となる。

同関係者らによれば、追浜工場の売却先には複数の候補が浮上しており、日産は地元への影響も考慮して慎重に進めたい意向だという。関係者の1人は、アンドゥリルは同工場で働く従業員の多くをドローン製造要員として採用する意向だと明らかにした。別の関係者は「正式に決定したわけではない。ほかの選択肢もまだある」とした上で、この案件は「日本の防衛政策とも絡む」と語った。

アンドゥリルが検討している工場の取得額は分かっていない。取得する対象が工場全体なのか一部なのかも明らかになっていない。工場取得にあたっては、アンドゥリルが自衛隊からどの程度の規模のドローンを受注できるかが重要になる、と関係者らは説明した。

アンドゥリルはロイターの問い合わせに対し、憶測にはコメントしないとした上で、日本市場の重要性に言及した。「日本政府と緊密に連携し、自衛力強化の優先課題への対応を支援している」とし、「国内の生産体制や産業基盤の強化につながる機会を模索している」と説明した。

日産広報は、同工場では27年度末まで計画通り車両生産を続けるとした上で、追浜工場の跡地活用については「引き続き検討を進めているが、現時点で決まったことはない」とした。

<純日本産のドローン>

ウクライナ戦争でドローンの重要性を認識した日本政府は、技術の急速な進化に合わせた新たな戦い方を模索している。27年度までに数千機のドローンを配備し、沿岸部で敵の上陸を阻む「シールド(盾)構想」を計画する。国内総生産(GDP)の2%まで引き上げた防衛費を次期防衛力整備計画でさらに上積みする方針で、各国の防衛関連企業が日本への参入を目指している。

2017年創業のアンドゥリルはその1社で、25年12月に日本市場への参入を表明した。東京に拠点をすでに立ち上げており、日本政府が目指している日本製部品だけを使ったドローンの試作品を発表済みだ。複数の日本企業と提携し、純日本産ドローンの開発・生産を進めている。米空軍は6月17日、有人戦闘機に伴走して飛行する自律型ドローンの量産をアンドゥリルと米防衛大手ゼネラル・アトミクスに発注することを決めた。

小泉進次郎防衛相は昨年12月、日本法人設立のために来日した創業者、パルマー・ラッキー氏らと面会した。小泉氏はその後、アンドゥリルからは「学ぶことが多い」と交流サイトのXに投稿した。さらに小泉氏は4月の国会答弁で、アンドゥリルと米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)との連携に触れ、ドローンメーカーと自動車産業の協力事例として挙げた。

防衛省はアンドゥリルが追浜工場取得を検討していることについて「民間企業間の協議の詳細に答える立場にない」と回答。ドローンなどの調達を巡って同社と協議したことがあるかどうかは「日頃から国内外の優れた製造事業者等と面会して最新の装備品などの情報収集、打合せ、商談などを行っているが、相手企業との関係もあるため、詳細についての回答は控える」とした。

<地元の理解>

日本経済をけん引してきた自動車産業は米国の関税政策、中国勢の台頭、電気自動車(EV)の市場拡大など事業環境の変化に直面している。とりわけ日産への影響は大きく、26年3月期は2期連続で巨額の最終赤字を計上した。

日産は昨年5月、世界で2万人の人員削減と7工場の閉鎖などを進める構造改革の実施を表明。同社初の量産型EV「リーフ」を手がけた追浜工場も削減の対象で、昨年7月には同工場での車両生産を九州の工場(福岡県苅田町)へ移管・統合すると発表した。同工場で生産に携わる従業員約2400人には、原則として移管先である子会社の日産自動車九州(同)への転籍が提示されているが、九州への転居が難しい従業員は近隣企業などへの転職を支援する。当時、工場跡地の活用方法については「複数のパートナーと交渉中で、さまざまなシナリオを考えている」とイバン・エスピノーサ社長は説明していた。

追浜工場の跡地活用の行方は地域社会・経済への影響も大きく、地元の理解が欠かせない。関係者の1人は「(防衛装備品という)製品の性質上、地元の理解も必要だ」といい、日産側は「慎重に協議を進めたい」意向だという。

横須賀市には海上自衛隊と米海軍の基地がある。小泉防衛相の選挙区でもある。

横須賀市は跡地活用について「雇用創出や横須賀の地域経済・地域社会の活性化につながること、今後の横須賀市の発展に資する土地活用となるよう十分なご配慮をいただきたい」と再三にわたり要望している。

(白木真紀、Tim Kelly、竹本能文 編集:久保信博)

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