社会は国民の一定数が一定時間働くこと、すなわち一定の労働量で成り立っているが、どれほどの労働量で社会を回しているかは国によって異なる。単純に考えると労働量は就業者数と労働時間の積であって、これを人口で割ると人口当たりの労働量が出てくる。

日本は就業者が6781万人で、週の平均就業時間は36時間だ。就業時間が短い印象を受けるかもしれないが、これは女性や高齢者も含めた全就業者の数値であるためだ。両者の積の労働量(a×b)で、1億2380万人の人口(c)を養っている。人口当たりの労働量は19.72となる。
欧米諸国では、日本よりも少ない労働量で社会を回している。ICT化が進んだ北欧諸国で、人口当たりの労働量が少ないのは頷ける。値が低いフランスは、一週間無休で営業したパン屋が罰せられるような国だ。それでも社会は回る。対して日本、韓国、ベトナムといったアジア諸国は効率の悪さが目につく。
スペインやイタリアも、人口当たりの労働量が少ない。これらの国では,全ての年齢層の労働参加率が日本より低く、労働に重きを置いていない。スペインでは、コロナ禍の時期に一部経済活動の停止命令が出されたほどだ。失業率と自殺率が強く相関することもない(「不要不急の仕事」の発想がない日本は、危機に対して脆弱な社会〔2020年4月8日〕、本サイト)。それでも社会を回している。
文化の違いと片付けるのではなく、日本もこういう社会を目指すべきだろう。業務のICT化を進める、過剰サービスを見直すなど、「省力」の余地は数多くある。最も人手不足が著しい、工事現場の交通誘導員のような仕事を機械化することもできる。「日本人は死ぬまであくせく働かないといけない」と欧米諸国から揶揄されかねない現状だが、高齢期の働き方を緩やかにする余地はある。
<資料>
総務省「就業構造基本調査」(2022年)
総務省統計局「世界の統計2026」