<味方を司法省に送り込んでは政敵への報復に躍起になり、忠誠と愛を誓う右腕弁護士は長官に……。もはや「愛と報復のトランプ劇場」と化している米司法省の現状を、アメリカ出身芸人のパックンが分かりやすく解説>
旧約聖書に、Vengeance is mine(復讐するは我にあり)という神様のセリフがある。トランプ米大統領も就任してから政敵に対する報復を繰り返している。弁護士事務所も、メディア企業も、大学も、コロナ対策を率いた米国立アレルギー・感染症研究所長のアンソニー・ファウチ先生も、マーク・ミリー統合参謀本部議長も……。トランプのターゲットにされた個人や組織を挙げると枚挙にいとまがない。神っているね! オーマイガー!
お気に入りの手段は、政敵への捜査や訴追を司法省にやってもらうこと。有罪判決が出れば一番いいが、捜査対象となるだけでも名誉に傷が付き、弁護士を雇って応戦するにもお金と気力が要る。ただ、トランプのこの作戦がうまくいかなかった政敵が1人いた。2016年の大統領選挙で、トランプ陣営とロシアが共謀したとされる「ロシア疑惑」を捜査したジェームズ・コミー元FBI長官だ。
トランプはコミーをやっつけるために、裁判の経験もないホワイトハウスの補佐官を連邦検事に暫定指名した。ところが、コミーを偽証罪などで訴追したところ、裁判官にすぐ退けられた。前任の連邦検事の退任から120日以上がたっていたため、上院の承認を経ない暫定検事の任命が可能な期限を過ぎていたからだ。つまり裁判で証明されたのは、コミーじゃなくてトランプ側が法を犯していたということ。
25年4月、砂浜に「86 47」という形に貝殻が並んだ写真を投稿したことでコミーが再びにらまれた。「47」代大統領を「86」(追い出そう)という「無害な」メッセージだが、自分への脅迫だと解釈したトランプは、当時のパム・ボンディ司法長官に改めてコミーの訴追を要求した。当然、長官は応じなかったが、そのためか今年4月にトランプはボンディを86した。