「コミュニケーションコストが高い人」は腕があっても消える
本書の解説パートでは、耳の痛い現実が次々と明かされる。「連絡が遅い」「こだわりが強すぎて修正指示を聞き入れない」「媒体の意図を汲み取ってくれない」——そんなフリーランスは、どんなに腕が良くても、発注者の社内で「コミュニケーションコストが高くて面倒な人」としてブラックリストに入れられ、二度と声がかからなくなる。
これは単なる礼儀の話ではない。発注者である会社員にとって、フリーランスへの仕事の依頼は「膨大な量の業務の一部」に過ぎない。上司への報告、他部署との調整、予算の管理……そうした本来業務の合間に、外部のフリーランスとのやり取りをこなしている。そこで「余計な手間」が発生すれば、たとえ成果物が優れていたとしても、「次も頼もう」とはならないのだ。
逆に、クライアントの「面倒ごと」を徹底的に解消して「安心感」を提供できる人は、スキルに関係なく、市場で圧倒的な「指名買い」のポジションを築くことができる。著者が30年にわたって営業なしで仕事を受け続けてきた理由も、突き詰めればここにある。
「自分のために働かない」という究極の生存戦略
本書の終盤で語られる哲学は、ネット上に漂う閉塞感を打破する強力なエネルギーに満ちている。
「クリエーション(創造力)ではなく、イマジネーション(想像力)です。自分のために働くのをやめ、誰かの役に立つ喜びを第一義にしたとき、仕事は向こうから勝手に舞い込んでくる」
現代は生成AIの台頭により、単に「指示通りに綺麗に文章を書くだけ」のスキルは急速にコモディティ化している。ネット上の「ライター食えない論」の背景には、このスキルの価値暴落がある。しかし、だからこそ「発注者の背後にある事情を汲み取る想像力」や「チームを強く意識する当事者意識」といった人間にしかできない領域の価値が、これまで以上に高まっているのだ。